太陽SS 守りたいもの

早朝の日差しが庭に透明な日だまりを作っている…-。

兄達との騒動があった翌日、俺は国議の前に早起きをして絵の続きを描いていた。

(昨日は悪いことしたな)

(あんなところを見せて……)

〇〇が昨日見入っていた木漏れ日の絵を筆に重ねながら、俺は小さくため息を吐く。

(父さんは心配だし、兄さん達が必死になるのもわかるけど)

(彼女にあんなもの、見せたくなかった)

強くまぶたを閉じて、昨日の不快な出来事を追い出そうとする。

執事「レイス様……ほとんどお眠りになっていないのでは」

静かに控えていた執事が気遣わしげに声をかけてきた。

レイス「大丈夫。朝の国議の時間まで描かせてくれ」

執事「……はい」

(彼女とずっと一緒にいられなくなってしまったから)

(これを見て、少しでも楽しい気持ちになってもらえたらいいな)

(こんなことしかできないけど)

彼女を想いながら、朝の日差しをキャンバスに重ねる。

それは束の間の幸せな時間…-。

……

その夕…-。

国議を終え、仕上がった絵とヴァイオリンを手に〇〇の部屋を訪れる。

レイス「いい?」

絵を披露すると、彼女は嬉しそうに目を細めてくれた。

レイス「今、仕上げてきたんだ。昨日は嫌なものを見せてしまったから」

絵を見つめる彼女の瞳はきらきらと輝いている。

(よかった)

(これを飾ったら、彼女の好きな曲を弾こう)

彼女の好きそうな曲を考えながら、窓際に絵を飾っていると…-。

レイスの兄「姫君。一緒にいらしていただきたい」

突然に、兄が部屋に入ってきた。

兄は俺の姿を認めると、不快そうに眉をひそめる。

(彼女になんのようだ……?)

〇〇「あの……?」

レイスの兄「ご無礼をお許しください。されど我が国は今、世継ぎを決める大事な時期。 トロイメアの姫君たる貴女がレイスと一緒にいると、家臣の心が騒ぎます」

(まさか、彼女まで……)

レイスの兄「しばらく、王位継承権第一位の私の元にいらしていただきたい」

レイス「……!」

兄は、そう言い捨てて、彼女の手を取り部屋を後にする。

(……許さない)

(彼女を巻き込むことは、許さない)

乱暴に閉じられた扉を見つめ、壁を拳で殴った。

兄の後を追い、庭を駆ける。

廊下の向こうに二人の後ろ姿が見えた。

(〇〇……!)

兄に手を引かれ、彼女は困惑したように何度も後ろを振り返る。

(……気安く触れるな!)

(二度と、誰かに触れさせたりしないように)

(綺麗なもので君の世界を満たせるように)

(……君を守れるように)

(そのためなら、王位を狙うのも悪くないかもしれない)

レイス「俺、強くなるよ」

胸の一番奥で、俺自身に誓いを立てる。

一つ大きく息を吸って、兄の肩を掴んだ。

レイス「待て」

一度たりとも、兄に歯向かおうと思ったことはない。

彼女は、俺が初めて持った“守りたいもの”だった…-。

おわり。

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