太陽最終話 優しい光

屋台が立ち並ぶフードコートは、まるで夏祭りの会場のように賑わっている…-。

〇〇「皆さん、おいしそうに食べてますね」

皆の笑顔を見ていると、自然と私の口元もほころんでいく。

紫雨「うん、そうだね。でも……そろそろ僕達も何か食べようか」

〇〇「あ……はい!」

私達は屋台が並ぶ通りを歩く。

紫雨「どれにしようか? 全部おいしそうだから迷っちゃうね」

新鮮な具材がたっぷり挟まったパンや、色とりどりの果物が入ったクレープなど……

辺りには、本当にたくさんの屋台が所狭しと並んでいる。

(いろいろあって目移りしちゃうな)

二人であれこれ見ていた、その時だった。

屋台の店主「おっ!お似合いだね。お兄さん、お姉さん」

〇〇「えっ!?」

屋台の店主「せっかくだし、味見していってよ」

そう言うと屋台の店主さんは、淡いピンク色をした大きな綿あめを差し出す。

(お似合いって……)

(紫雨さん、どんなふうに思ってるかな)

ドキドキしながら紫雨さんを見ると、彼は照れくさそうに微笑んでいる。

(あ…-)

不意に、こちらを見た彼と目が合った。

紫雨「……! えっと……。 せっかくだから、一つ買ってみる?」

〇〇「……はい」

私達は店主さんから大きな綿あめを受け取ると、邪魔にならないよう会場の隅へと移動する。

辺りに人の姿はなく、どこからか小鳥の楽しげな鳴き声が聞こえてきた。

〇〇「それじゃあ、半分こしましょうか」

紫雨「うん。そうだね」

綿あめを手で分けようとしたその時、紫雨さんは顔を近づけて綿あめを口にする。

紫雨「うん、おいしいよ。ほら、君も」

紫雨さんに促されて一口食べると、舌の上に優しい甘さが広がった。

〇〇「おいしい……!」

紫雨「ね!」

ふわふわと手元で揺れる綿あめを二人で分け合いながら食べ歩いていると、不意に、さっき声をかけられた時のことが頭をよぎった。

――――――

屋台の店主『おっ! お似合いだね。お兄さん、お姉さん』

―――――

(私達……恋人同士に見えるんだ)

そう思ったら、恥ずかしさ顔が熱くなる。

紫雨「……〇〇?」

〇〇「は、はいっ!」

突然名前を呼ばれ、思わず声が裏返ってしまった。

紫雨「……どうしたの?」

〇〇「いえ……なんでもないです。ごめんなさい」

紫雨「……」

紫雨さんの澄んだ瞳が、静かに私を映し出している。

〇〇「紫雨さん?」

紫雨「……元気になった?」

〇〇「え……?」

紫雨「いろいろ、格好いいこと言っちゃったけど……何よりも君に楽しんでほしかったんだ」

〇〇「……私に?」

紫雨「もちろん、言ったことに嘘なんてないよ。だけど……。 僕は……〇〇の笑顔が、一番見たいから」

澄んだ言葉が、私の心を射抜く。

(そんなふうに思ってくれてたなんて……)

ふわりと吹いた風が、紫雨さんの黒い髪を揺らす。

私はそれを見つめながら、高まる胸の鼓動を感じていた。

〇〇「……ありがとうございます。今日は紫雨さんに誘ってもらえて、本当によかった…-」

その時、言葉を遮るようにして紫雨さんが私を引き寄せる。

〇〇「!」

紫雨「本当に?」

熱を帯びた眼差しを向ける紫雨さんから、目が離せなくなる。

〇〇「はい」

紫雨「……」

彼はじっと私を見つめて、静かに深呼吸をすると……

紫雨「あのね……。 君のことが……好きだよ」

〇〇「……!」

驚く私を見つめながら、紫雨さんが言葉を続ける。

紫雨「やっと……言えた。 君にはこれまでの旅で、たくさん勇気をもらった……。 星祭りで初めて自分の思いを短冊に綴った時も、狼と出会ったあの日も……。 後ろばかり向いていた僕を、光の当たるところに連れ出してくれた」

(それは……違う)

紫雨さんの綺麗な瞳を見つめ返す。

そこには、きらきらとした光が宿っているように見えた。

(紫雨さんは気づいていないだけ)

(自分の持つ、優しい光に…-)

〇〇「私はたくさん、紫雨さんから優しさをもらっています。 その優しさが、私を守ってくれている……」

(そう……)

(紫雨さんの優しさは、笑顔を運んできてくれる)

空から降り注ぐ太陽と月の光が、紫雨さんを照らす。

紫雨「……これからも、君を守らせて」

少しためらいがちに、彼の顔が近づく。

柔らかな感触と共に落とされた優しいキスは、ほんのりと甘い綿あめの味がした…-。

おわり。

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