太陽7話 頑張る気持ち

その後…ー。

ミヤと城へ戻り、怪しい魔術師のことを報告し終えると、城の警備が強化された。

物々しい雰囲気の中、ミヤは城の人達に元気いっぱいに振る舞い、その笑顔が皆を明るくさせていた。

それから…ー。

(ミヤ、どこに行っちゃったんだろう)

(また森に行ったのかな?)

森へ足を向けようとしたその時、書斎からたくさんの本を抱えたミヤが出てきた。

ミヤ「あれ? どこか行くの?」

◯◯「ミヤ!」

両手に抱えた本の隙間から、ミヤが私の顔を覗く。

◯◯「勉強……?」

ミヤ
「そう。 魔術を、もう一度基礎からちゃんと学ぼうと思って。 今まで我流でやってきたけど、それだと限界があるし」

ミヤの瞳が強く輝く。

ミヤ「もっと強くなりたいからさ!」

冗談めかしてミヤが笑う。

◯◯「うん!」

ミヤ「それに、今のところ音沙汰ないけど対立国もいつ動くかわからないからね」

突然に真剣な表情を浮かべ、ミヤがつぶやく。

ーーーーー

ローブの男「こんなところで供もつけずに……不用心だな、ミヤ王子」

ミヤ「誰だ」

ローブの男「イリア王子に用があったんだが、生憎今は城にいないようでな」

ーーーーー

◯◯「あの魔術師のこと……?」

ミヤ「ああ。あいつ、イリアに用があるみたいだった……そして、もうすぐイリアが帰って来る。 でも心配しないで。もし来ても、オレが撃退するからさ」

ミヤが、にっこりと私に笑いかけてくれる。

◯◯「きっと、ミヤならすぐに撃退しちゃうね」

ミヤ「任せといて!」

輝くミヤの笑顔が本物の太陽のようで、私の胸まで温かくする。

その時…ー。

王妃「何をしているのですか?」

王妃様の冷たい声が、温かな雰囲気に影を落とした。

王妃「ミヤ……その本は?」

大量の本を抱えるミヤを見て、王妃様がいぶかしげに尋ねる。

ミヤ「魔術を、きちんと勉強しようと思いまして」

王妃「いったいどんな風の吹き回しかしら」

あざ笑う口元を手で隠して、王妃様はミヤを冷たい瞳で見つめた。

(ミヤ……)

ミヤ「オレ、頑張ることにしたんです。イリアに負けないくらい」

王妃様の視線に怯むことなく、ミヤはきっぱりと言い切った。

王妃「そう……それは面白いわね! 楽しみにしてるわ」

王妃様の笑い声が、廊下に響き渡った。

(ひどい……)

◯◯「ミヤなら、きっとできます!」

思わず、そう口に出してしまっていた。

ミヤ「◯◯ちゃん……」

王妃「トロイメアの姫君は、ミヤと仲が良いのですね。 ですが、あまりミヤに肩入れしすぎないでいただきたいですわ。 この国を継ぐにふさわしい人間は、イリアですから」

ミヤ「……」

容赦ない言葉が、胸に突き刺さる。

王妃様は踵を返し、その場を去って行った。

◯◯「ミヤ……」

本を抱えながら、ミヤは立ち尽くしていた。

私まで胸が苦しくなって、胸元で手を握りしめた。

(せっかく、ミヤが頑張っているのに……)

けれど…ー。

私の心配をよそに、ミヤはくすくすと笑っている。

◯◯「え? ミ、ミヤ……?」

ミヤ「◯◯ちゃんは度胸あるなー! あの怖~い、母上に向かって!」

◯◯「だ、だって……!」

抱えてる本を床に置いて、ミヤが私の頭に手を乗せる。

ミヤ「ありがとう。すごい嬉しかった。 大丈夫だよ」

澄んだ空色の瞳が、私をまっすぐに見つめている。

その瞳が、だんだんと近づいて……

◯◯「……っ」

前髪が優しく掻き上げられて、額にキスが落とされた。

ミヤ「感謝のしるし」

突然の出来事に、火照る顔を抑えながら、私はにこにこと笑うミヤを見つめることしかできなかった……

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