太陽7話 月夜の舞

城に着くと、従者さん達がいっせいに私達を出迎えてくれた。

従者1「桜花様、すっかり顔色がよろしいようで」

桜花「ああ、もうすっかり元気だ」

従者2「心配しておりましたが、ご無事でよかったです」

従者1「これで、開花の準備に取りかかれますね」

桜花「ああ。承和へと行くためにも、すぐにでも準備を始めよう」

城内が、一気に活気づく。

穏やかな表情から一転、桜花さん達は真剣な表情になった。

(素敵な春になりそう・・・・楽しみだな)

開花の儀式を、数日後に控えた夜・・・・ー。

(眠れない・・・・)

目がさえてしまい、私は窓を開けて夜空を眺めた。

○○「・・・・!」

夜空に、桜の花びらがひらひらと優雅に舞っている。

中庭を見ると、桜花さんが一人でたたずんでいた。

(桜花さん、何をしているのかな?)

気になって、中庭に向かうと・・・・

○○「・・・・!」

静寂の中、桜花さんが一人で舞の練習をしていた。

桜花「ここで唄方が・・・・」

月明りに照らされたその姿を見て、私は思わずはっと息を呑む。

(すごく綺麗・・・・)

呆然と見とれていると、桜花さんと視線が交わった。

桜花「○○さん」

○○「邪魔してしまって、すいません・・・・」

桜花「ちょうどよかったです。少し休みたかったので、お付き合いいただけませんか?」

桜花さんは、中庭にある長椅子に私を促す。

そこに、桜花さんと並んで腰をかけた。

○○「桜花さん、何をしていたんですか?」

桜花「開花の儀式の練習です」

儀式では、桜花さんが木の下で舞を踊って桜の開花を促すという。

桜花「桜は私達にとって春の象徴です。人々が素敵な春を迎えられるかどうか、私にかかっていますから」

桜花さんの表情は、緊張を帯びていた。

握りしめていた手のひらも、微かに震えている。

(桜花さんが、責任を一身に担っているんだ・・・・)

(きっと、すごくプレッシャーを感じているんだろうな)

震えている彼の手を、そっと両手で包み込む。

○○「きっと、桜花さんなら大丈夫です」

桜花「○○さん・・・・」

○○「桜花さんの咲かせる桜、楽しみにしています」

強張っていた彼の表情が、一瞬ふっと緩んだ。

桜花「○○さん、私は・・・・いや、やめておきましょう」

桜花さんは、何かを言いかけてやめてしまう。

(何を言おうとしたのかな?)

気になったけれど、桜花さんはそのまま口をつぐんでしまった。

すでに、その手の震えは止まっていた。

○○「開花の儀式、頑張ってください」

桜花「○○さんの期待に応えられるように、頑張ります」

力強く頷いて約束をすると、桜花さんは再び舞の練習を始める。

世界に二人しかいないように思える静けさの中で、

私はその幻想的な光景を、ただただ夢のように見つめていた・・・・ー。

<<太陽6話||太陽最終話>>