太陽SS あなたを想い開く花

○○さんと湯治の旅から帰ってから、しばらく・・・・ー。

開花の儀式のため、私は彼女と共に承和の国へ訪れていた。

(今年の儀式は、あなたと一緒に参加できるのですね)

大勢の人達の中、私を見守る彼女の姿を舞台から見つけることができた。

(・・・・あんなに顔を強張らせて)

その表情が、私を心から応援してくれていることを伝えてくれる。

(その期待に応えたい)

挨拶を終え、小さく息を吐き出して呼吸を整える。

(湯治の旅まで心配をかけてばかりでしたから・・・・)

(もう大丈夫ですと、しっかりとあなたに伝えたい・・・・ー)

瞳を閉じて、静かに腕を天にかざす。

桜花「・・・・」

考えずとも体が自然と動き、舞がつくられていく。

舞に合わせ、風がたくさんの桜の花弁を連れてやってきた。

○○「・・・・!」

(○○さん・・・・私はもう、大丈夫ですよ)

桜吹雪に人々の視線が集まる中で、○○さんと目が合った。

(あなたのおかげで、体調はとてもよくなりました)

(今度は私が、あなたにお返しをしたい)

うららかな陽気に包まれて○○さんを想う。

そして・・・・ー。

(この国に・・・・人々のもとへ)

(そして○○さん、あなたのもとへ)

桜花「春よ、来れ!」

木々達が桃色に色づき、桜の花が満開になった・・・・ー。

観客1「わぁ〜、すごい!」

観客2「今までに見たことないくらい、綺麗な桜だ・・・・」

人々の喜んでくださる声に、ほっと安堵の息を吐く。

桜花「ご覧くださり、ありがとうございました。皆様によい春の訪れを願っております」

たくさんの拍手と歓声に心からの言葉を贈り、退座した。

(この気持ちを、彼女に伝えたい)

○○さんの前まで歩み寄ると、彼女は瞳をきらきらと輝かせていた。

桜花「いかがでしたか?」

○○「はい・・・・すごく綺麗でした! 桜花さんの舞も、素敵で・・・・」

桜花「あなたにそう言ってもらえると、とても嬉しいです」

彼女は感動した様子で、私に言葉をかけてくれる。

けれど・・・・

(あなたの方が、よほど・・・・)

桜を見上げる彼女の横顔こそ、私には何より美しく見える。

(いつもは言葉を失うことなどないのに・・・・この気持ちを、あなたにどう伝えればいいのでしょう)

言い表せない感情に戸惑い、思わず彼女の手をとっていた。

○○「・・・・!」

桜花「一緒に、この辺りを歩きませんか?」

○○「・・・・はい」

○○さんは、小さくはにかんで頷いてくれた。

・・・・

・・・・・・

手を繋ぎ、桜並木の下を歩く。

(綺麗に咲いてくれた)

彼女にならって桜の木を見上げていると、さまざまな想いが込み上げてくる。

(毎年見ているはずなのに・・・・今年はより一層美しく見える)

(それは・・・・ー)

握りしめた指をきゅっと絡める。

(やはり、この想いを伝えなければ・・・・)

桜花「この桜は、私の心が影響するんですよ」

自分の声が震えていないかが、ただ心配だった。

桜花「なので、今年の桜がこんなにも綺麗なのは・・・・」

(どう伝えたらいいのか・・・・)

少しだけ言い淀むと、彼女は不思議そうにこちらを見つめ返した。

桜花「今年の桜がこんなに綺麗なのは、○○さん、あなたのおかげなのです」

○○「そんな・・・・桜花さんが一生懸命練習されていたからです!」

心からの言葉を伝えても、彼女は首を横に振ってしまう。

桜花「どこまでも・・・・あなたは奥ゆかしい方ですね」

(どうしたら・・・・伝わるでしょうか)

その時・・・・ー。

桜の花びらがひらひら、ふわりと彼女の髪へと落ちてきた。

私は思わずその花びらに手を伸ばし・・・・ー。

○○「・・・・!」

桜花「○○さんの髪に、桜の花びらが舞い落ちました」

いとも簡単に○○さんに触れてみせた花びらを手に取り、彼女に見せる。

(花びらに嫉妬してしまいそうだ)

桜花「悪戯好きな、花びら達だ。 桜の色が綺麗なのは、私の心があなたの優しさで満たされているからです。 満開の桜の花は、あなたへの溢れる気持ちを表しています」

(どうか・・・・私の気持ちを受け止めてほしい)

まっすぐ彼女を見つめ、言葉を紡ぐ。

桜花「こんなにも温かな気持ちで春を迎えることができたのは初めてです」

桜色に色づく頬に、誘われるように触れてしまった。

桜花「○○さん」

○○「お、桜花さん・・・・」

彼女をより近くに感じられるように距離を縮める。

桜花「大丈夫です。ここは誰にも見られません。 ・・・・それとも、嫌ですか?」

自分で尋ねておきながらも、答えはもう、聞かずともわかっていた。

(きっと、あなたなら・・・・)

彼女の返事を聞く前にそっと唇を重ねた。

桜花「これからも、あなたと共に春を重ねていきたい」

心地よい風が吹き抜けていく。

私の想いをのせて、桜の花びら達がふわりと空へ舞い上がっていった・・・・ー。

おわり。

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