太陽最終話 君という不思議を私に

夜空に、星々がきらきらと瞬いている・・・・ー。

白いテーブルクロスが敷かれたテーブルの上には、まださまざまなお菓子や紅茶が残されていた。

帽子屋さんはその場からピンクのマカロンを一つ摘まみ上げると・・・・

マッドハッター「本当は退屈で退屈で堪らなかった、もちろん君を自慢する優越感はありましたが・・・・ー」

○○「・・・・?」

くすりと笑い、彼は手にしたマカロンを私の唇に運ぶ。

マッドハッター「だってそうでしょう?本当は早く君と二人きりになりたかったのに・・・・。 皆さん、私が思ったよりずっと長く居座るんですから・・・・」

○○「・・・・お茶会を開くと言ったのは帽子屋さんですよ?」

マッドハッター「はい。だって、こんなに可愛らしいお嬢さんが私と交際してくださると言うんですから。 しかしたった数時間ですら、君を独り占めできないことがこんなにも辛いなんて・・・・」

呆れたようにため息を吐き、たった今マカロンを運んだ唇を指先でなぞる。

マッドハッター「予想外でした」

唇が彼の指先に触れられて・・・・

そのくすぐったい感覚に私は身をよじる。

マッドハッター「○○嬢、よければこれから、私と二人っきりのお茶会はいかが?」

その場にあったカップに紅茶を注ぎ、帽子屋さんが問いかける。

○○「・・・・はい、あまりお話できませんでしたから」

すると彼がそのまま私を、テーブルの上に押し倒した。

○○「ぼ・・・・帽子屋さん?」

ガチャリと茶器が鳴って、真っ白なテーブルクロスに紅茶がこぼれそうになる。

突然のことに頬を染める私には構わず、帽子屋さんはくすりと楽しそうに笑う。

マッドハッター「では、まずはこのようなスミレの砂糖菓子などいかがです?」

彼は陶器のかわいらしい小箱から、紫色の菓子を摘まむと、私の目の前でそれを見せた。

○○「綺麗な色・・・・」

マッドハッター「きっと君のその小さな唇に、よく似合うでしょう。 先ほどは私がマカロンを君に運びましたが、次は君の方が唇で・・・・どうぞ?」

甘やかな声で誘うように言って、菓子を私の前に近づける。

○○「・・・・っ」

私は胸を高鳴らせて、彼の指先に口を寄せる。

そして・・・・

○○「んっ・・・・」

菓子を唇で受け取ると、口にゆっくりと含んだ。

ふんわりとした甘い花の香りが、口のなかに溶けてゆく・・・・

マッドハッター「美味しそうに召し上がるのですね・・・・私にも一ついただけませんか?」

優しげな笑みを浮かべ、ねだるような仕草で彼は言う。

○○「えっと・・・・どうぞ?」

(これでいいのかな?)

指先で同じ紫色の小粒を摘まむと、彼の唇に・・・・

マッドハッター「そうではありません、こちらの菓子の方が甘そうだ・・・・」

○○「え?  っ!」

彼は私の手を砂糖菓子ごと、テーブルの上に縫いとめると、私の唇を強引に奪った。

○○「・・・・」

キスは花の蜜の味がした。

そして大人の男の人の、酔ってしまいそうに魅惑的な香りが・・・・

○○「っ、帽子屋・・・・さんっ、だ、駄目です!」

私は彼の胸元を叩いて、口づけをやめさせると・・・・

マッドハッター「君があまりに可愛らしいから。この人が私の恋人かと思うと、我慢がきかなくて・・・・」

その割に、彼の顔に浮かぶ笑みは、静かな湖畔のような落ち着きを持っていて・・・・

マッドハッター「すみません、少しイタズラが過ぎました、でもドキドキしたでしょう?」

(ずるい人・・・・)

耳元で優しげに言われると、何も言い返せなくなる・・・・

すると彼は私の頬を撫で、口元に極上の笑みを浮かべて私に言った。

マッドハッター「これからも奇妙でおかしなこの世界で、君という不思議を楽しませてくれませんか?」

私はしばらく考えて・・・・

○○「はい、私の・・・・帽子屋さん」

恥ずかしくて、控えめな声で答えると、彼の唇がまた降ってきた。

口づけは砂糖菓子より甘く、優しく濃厚で・・・・

私は彼の腕の中、すぐに蕩けて溺れてしまった・・・・ー。

おわり。

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