太陽最終話 言祝の、したいこと

言祝さんは、まだ足元がふらつく私を気遣いながら、国王様へ謁見を申し出た。

言祝「父上、お話があります」

国王「なんだ? ・・・!」

私の姿を見て驚く国王様を、言祝さんは真正面から見据えた。

国王「どういうことだ、言祝」

言祝「このようなことは、もうやめませんか?」

国王「・・・」

言祝「〇〇を無理やり争いに参加させ、メイの国を出し抜いて・・・。 それで、本当に終わるのですか?」

私の肩を抱く言祝さんの手に、力がこもる。

彼を励ますように、そっと手を重ねた。

言祝「また、新たな火種を生み出すだけでしょう。こんな争いは・・・もう嫌です」

国王「しかし言祝。メイの国は、我が国の民を苦しめ続けるぞ。それでもいいのか」

国王様の声にも、苦しみがにじんでいた。

言祝「・・・もちろん、よくありません。 しかし、解決の糸口は・・・父上と、メイの国の女王の中にしかないのではありませんか」

国王は、虚を突かれたように押し黙った。

言祝「もちろん、俺にできることはなんでもやります。そして、素晴らしい国になるように公務に励みたい」

言祝さんのまっすぐな眼差しを受け止めて・・・

国王「・・・お前が、こんなことを言うとはな」

深く息を吐くと、国王様は続けた。

国王「・・・お前の意見はわかった」

緊張していた言祝さんの表情が和らいでいく。

(よかった・・・!)

国王「だが、すぐにというわけにはいかない。メイの国との確執は、お前が思う以上に深い」

言祝「承知しております」

(私がどうにかできる問題じゃないかもしれない、けど・・・)

(言祝さんと、この国が救われるのなら)

〇〇「私にもできることがあれば、お手伝いさせてください」

決意を込めて私は言った。

言祝「・・・〇〇」

国王様は、なぜだかとても寂しそうな瞳を私達に向けた。

国王「二人を見ていると・・・昔のことを思い出す。 私とあいつで二人、いい国を築き上げようを約束した時のことを・・・」

言祝「父上・・・」

国王「トロイメアの姫君・・・謝って済むとは思ってはおりません。 いかなる罰も受けましょう」

〇〇「・・・では。 メイの国との和平に、言祝王子と協力して全力を尽くすことを、約束してください」

言祝「〇〇・・・」

国王「・・・約束しましょう」

そして私達は国王様に一礼して、扉に向かった。

(つい、ああ言ってしまったけど)

自分の口から出た言葉の重さを、今さらながら噛みしめる。

言祝「〇〇?」

〇〇「私・・・大それたことを言ってしまったんじゃ」

言祝「いいんだ、ありがとう・・・嬉しかったよ」

言祝さんが、柔らかく笑いかけてくれる。

言祝「心配しなくても大丈夫だよ。いや・・・俺が、大丈夫にしてみせる」

〇〇「・・・はい!」

言祝さんは、立ち止まって私の瞳を覗き込む。

言祝「確かに、きっとこれから大変だと思う。それでも・・・俺の傍にいてくれる? いや、俺の傍にいてくれ」

言祝さんは、そっと私を抱きしめる。

〇〇「言祝さん・・・?」

言祝「〇〇のおかげなんだ」

にっこりと微笑み、私の頬を手のひらで包み込む。

言祝「・・・俺はもう、からっぽじゃない。 国のことも・・・君のことも。俺には今、したいことがたくさんある」

〇〇「・・・!」

言祝さんの顔が近づいてきて、思わず目を閉じる。

優しい口づけは、頬に落ちてきた。

私の額に、言祝さんは額をこつんとぶつける。

言祝「・・・続きは、部屋で。ね?」

そう微笑む言祝さんに、返す言葉が見つからない。

突然のことに足がふらついた私を、彼がそっと抱き上げた。

〇〇「言祝さん・・・?」

言祝「何?」

間近で、彼の瞳が私を見つめる。

〇〇「・・・っ」

恥じらいに顔を背けると、彼がくすくすと笑う。

私の耳に、そっと口づけが落とされた。

言祝「後でゆっくり聞くよ」

耳元で、優しい彼の声が響く。

その声に縛られたように、私は息をすることすらも忘れてまばたきを繰り返す。

言祝「エスコートします、お姫様」

言祝さんの新緑色の瞳が、私を映し出している。

その瞳は、出会った頃よりもずっと、みずみずしい輝きを帯びていた・・・―。

おわり。

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