太陽SS 誓い

夜風が悲しげな音を立てて通り過ぎていく。

姿を消した〇〇を探し、俺は小さな小屋にたどり着いた。

扉を開けると・・・

言祝「〇〇!!」

そこには両手を後ろ手に縛られた〇〇の姿があった。

〇〇「言祝さん・・・」

弱々しく俺の名を呼び、彼女はそれでもほっとしたようにまばたきをする。

言祝「お前達・・・今すぐここから立ち去れ!!」

見張りをしていたらしき兵士達に、強く命ずる。

城の兵士「しかし、国王様が・・・!」

言祝「黙れ!この件は俺がすべて責任を負う」

怒りに声が震え、剣幕に押されるように、兵士達はその場を後にした。

言祝「〇〇・・・!」

縄を解きながら、指先まで怒りに震えていた。

赤くあとになった彼女の手を見ると、後悔が胸を巡る。

(俺のせいだ)

(ずっと目を背けてきた、その報いだ)

(まさか君を・・・こんな形で巻き込んでしまうなんて)

言祝「・・・すまなかった。俺が父上と向き合わないばかりに・・・」

心の底から、自分の弱さを嫌悪した。

言祝「俺は・・・からっぽな人間だったんだ。 この国の王子として、それが自分の意志だと言い聞かせながら、父上の言いなりになっていた。 でも、君の言葉で気づいたんだ。 ・・・俺には、したいことある」

そう口にすると、彼女はまっすぐに俺の瞳を覗き込んだ。

〇〇「教えてくれますか?なんでも協力します」

声はまだ震えていたけれど、彼女の瞳はどこまでも優しくて・・・

込み上げる熱いものを、必死に飲み下ろさなければならなかった。

言祝「ありがとう・・・」

(その言葉だけで、なんでもできそうな気がする)

言祝「立てるかな・・・その前に、一緒に来てほしい場所があるんだ」

・・・

・・・・・・

遠慮する彼女を横抱きに抱いたまま、城下街のはずれまでやってきた。

〇〇「ここは・・・?」

足元には柔らかな草花が敷き詰められ、空には美しい星々が輝いている。

言祝「俺の秘密基地」

ここに誰かを連れて来たのは、初めてだった。

〇〇「気持ちのいい場所ですね」

彼女をそっと降ろすと、俺は地面を指し示す。

言祝「見て。花やハーブを育てているんだ」

少しずつ、苗や種を集めて植えてきた草花。

夜露に濡れたその甘い香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。

言祝「ここにはね、昔、王宮があったんだって。 メイとアマツがまだ一つの国だった頃・・・」

〇〇「え?」

〇〇が俺の横顔を見つめる。

言祝「うん。今はいがみ合ってるけどね。もとは一つの国だったんだ。 先の見えない、父上の操り人形みたいな毎日の中で。 息が詰まりそうになると、俺はここに来た。 焼けこげて何もなかったここを花や緑でいっぱいにすれば、何かが変わるんじゃないか・・・って。 バカだろ?問題から目を逸らしておいて、何かできた気になってたなんて」

(そして、君を傷つけた)

風が二人の間を通り抜ける。

彼女の澄んだ瞳が、俺の瞳を見据えた。

〇〇「バカだなんて・・・思いません。 だって、すごく綺麗です。綺麗なものは、人の心を幸せにすると思うから。 ここがお花でいっぱいになったら・・・。 もしかしたら、たくさんの人が昔を思い出して、懐かしがるかもしれません。 そうしたら、また一つの国になる日だって、来るかもしれませんよ」

草花を見つめ、彼女はにっこりと微笑んだ。

〇〇「言祝さんのしていることは、無駄なんかじゃありません」

言祝「〇〇・・・!」

俺はどうしようもなく彼女を抱きしめる。

〇〇「こ、言祝・・・さん・・・?」

(どうしてそんなふうに、俺が欲しい言葉をくれるんだ)

泣きそうなほど、胸が高鳴っていた。

(・・・ありがとう)

(君がいれば、俺は強くなれる)

彼女の髪にそっと唇を寄せた。

言祝「・・・戻ろう。父上に言わないと」

〇〇「何を・・・ですか?」

(きっと、君が描いてくれた未来を、実現してみせる)

(だから・・・どうか、俺の傍に)

答える代わりに、彼女の瞳をまっすぐに見つめる。

どんな星よりも輝く彼女の瞳に、心からの誓いを立てた・・・―。

おわり。

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