太陽最終話 新たなる一歩

こうしてミリオンくんはモデルとして、雑誌やポスターに登場することになり……

彼がモデルを務めると、シンセアではスペルヴィアさんの服がすぐに流行し始めた…―。

撮影からしばらく経って……私はまたシンセアを訪れていた。

〇〇「また街に新しい店舗ができたんだってね」

目に見えて活気づいていく街に、胸が躍る。

ミリオン「皆、ミーハーだよね」

〇〇「ミリオンくんに憧れてるんだよ」

ミリオン「それは違う。こうして今回の事業が成功したのは、あくまで服の力だ。 悔しいけど、あんなに皆が喜んでるんだ。認めざるをえないよ。 それに、実際着てみると……案外悪くないしね」

他国の文化を認めながらも、彼はやっぱりどこか悔しそうな表情を浮かべている。

そんなミリオンくんの様子が微笑ましくて……そしてとても尊敬できた。

〇〇「確かに、その服も素敵だよね。 だけど、やっぱりミリオンくんの力も大きいと思う」

ミリオン「はいはい、ありがと。 けど、呑気に喜んでもいられない。見ての通り、他の仕事がかなり溜まっちゃったからなあ」

彼の視線の先をたどると、山になったおびただしい数の書類が目に入る。

(無理させちゃったかな)

けれど、ミリオンくんは文句を言う訳でもなく、その山に淡々と手をつけ始めた。

(すごいなあ……)

てきぱきとした動きに改めて感心しながら、せめてという思いでお茶を淹れることにした。

少しでも疲れが取れるようにと、いい香りのハーブティーを用意する。

〇〇「ミリオンくん、お茶が…-」

そう声をかけようとした時……

ミリオン「『スペルヴィア王子インタビュー・服にかける情熱』……か。 シンセアだけじゃない。他の国でも、スペルヴィア王子のデザインは受け入れられてるんだな」

ミリオンくんは手にした記事を、真剣な面持ちで読み込んでいる。

ミリオン「シンセアも、いずれは他国に影響を与えるような力を…-」

(邪魔しちゃ悪いかな……)

そう思って、一歩後ずさると…-。

ミリオン「ねえ、そういえばさ」

〇〇「え!?」

急に声をかけられて、落としそうになったポットをぎゅっと掴む。

そんな私を知ってか知らずか、ミリオンくんは未だ雑誌に視線を落としたまま……

ミリオン「今思い出したけど、〇〇の感想まだ聞いてなかったよね?」

〇〇「感想って……?」

ミリオン「僕のモデル姿のことに決まってるでしょ」

(急にそんなこと聞かれても……)

〇〇「えっと……格好よかったよ」

ミリオン「え? 何?」

促すように聞き返され、ドキドキと胸が高鳴り始める。

(聞こえてるはずなのに……)

少し悔しいけれど、こうなってしまってはやっぱり私にはどうしようもなくて……

〇〇「すごく……格好よかった!」

恥ずかしい気持ちを胸に押し込めて、思い切って大きな声でそう伝える。

すると…-。

ミリオン「……」

ミリオンくんは雑誌を置いて立ち上がり、柔らかな笑みを湛えてこちらに振り向いた。

ミリオン「そう言われると、新しいものを受け入れるのも、悪くないって思えるな」

〇〇「ミリオンくん……?」

爽やかに見える微笑みの奥に、妖しい色気が淡く揺れる。

ミリオンくんは、そっと私に歩み寄ると……鼻先が触れ合いそうな距離で、私の目を見つめた。

ミリオン「ねえ、そろそろ僕達の関係にも新しい変化が欲しくない?」

〇〇「え?」

ミリオン「そうだなあ、たとえば……」

(あ…-)

驚きに声を漏らす間もなく、肩を強く抱き寄せられる。

そして次の瞬間には、彼は深く口づけられていた。

〇〇「ん……っ」

突然の出来事に体が熱くなるのを感じながら、どうすることもできずただその甘さを受け入れる。

そのうち、肩を抱く手が首筋に滑ってくるのを感じて…-。

〇〇「ま、待って!」

ミリオン「……何?」

息の上がった私に、なんてことない表情でミリオンくんが首を傾げる。

(どうしよう……)

〇〇「その……お茶が冷めちゃうから」

ミリオン「……」

私は精一杯、誤魔化すように笑ってみせた。

そんな私の様子に、彼は小さくため息を吐き出す。

ミリオン「これじゃ、先が思いやられるな」

カーテンから射す柔らかな光に、二人の影が揺れる午後……

ティーポットからは、甘く爽やかな香りが漂っていた…-。

おわり。

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