太陽7話 夕日に燃える丘

丘に着くと、二人並んで夕日に赤く染まった街並みを見下ろした。

〇〇「すごく綺麗な眺め……」

イリア「そうですね……。 実は、私もこの時間のこの景色を見たのは初めてなのです」

〇〇「え……?」

イリア「初めてだからこそ、貴方と見たかった……」

彼の横顔を見上げると、その瞳が優しく細められた。

〇〇「イリアさん……」

イリア「喜んでいただけましたか? 〇〇様」

〇〇「はい、とっても! きっと夜景も綺麗でしょうね」

想像するだけで、そこに煌めく夜景が浮かび上がる。

イリア「夜景、か……確かに」

イリアさんが何かを考えるように、遠くに広がる街並みを見渡した。

イリア「ずっとここで生きてきたはずなのに想像したことすらなかった」

夕日に、彼の端正な横顔が照らし出されている。

その表情が、どこか憂いを帯びているように見えた。

(イリアさん……)

イリア「……綺麗なのでしょうね、きっと」

噛みしめるように、イリアさんがつぶやく。

〇〇「あの……」

気が付くと、彼の腕にそっと触れていた。

イリア「〇〇様……?」

(このままここにいれば、イリアさんと夜景が見られる)

(けど、イリアさんには、王妃様との約束が……)

心がどうしようもなく揺れる。

〇〇「……」

何も言えずにいる私の肩に、イリアさんの手が優しく置かれた。

イリア「……そろそろ、帰りましょうか」

〇〇「……はい」

夕日が、ゆっくりと沈んでいく。

ここにいたいという気持ちを振り切り、私はイリアさんの後を追った。

……

城に到着した頃には、空には美しい月が浮かんでいた。

イリアさんと食堂へ向かうと、王妃様が私達の帰りを待ち構えていた。

王妃「約束の時間を過ぎているわよ、イリア」

イリア「申し訳ございません、母上」

頭を下げるイリアさんから、王妃様の視線が私に移る。

冷たく細められるその瞳から、逃れることはできない。

王妃「いくらトロイメアの姫君とはいえ……次期国王をあまり連れ回されては、困りますわ」

〇〇「……申し訳ありません」

イリア「〇〇様は悪くありません」

頭を下げようとする私をかばい、イリアさんが口を開く。

〇〇「イリアさん……!」

イリア「連れ回したのは私です。責めるなら私だけを責めてください。 〇〇様はずっと約束のことを気にしてくれていました」

王妃「イリア……?」

王妃様が驚きに目を見開き、イリアさんを見つめている。

王妃「イリア、いったいどうしたというのです!?」

イリア「まだ何か、おっしゃりたいことはありますか? 母上」

イリアさんの剣幕に、王妃様はうまく言葉を続けることができないでいる。

イリア「ないようですね。では…―」

〇〇「……!」

イリアさんの長い腕が、私の肩を引き寄せた。

イリア「これで失礼いたします」

戸惑い口を開けずにいると、イリアさんが力強い腕で誘う。

(イリア、さん……?)

後ろを振り返ると、王妃様が呆気に取られたままイリアさんの背を見つめていた…―。

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