仕事を終えたハーツ君と街を歩きながら、たわいもない話をする。
相変わらず街には雪が降り続けていて、少しだけ指先が寒い……
ハーツ「アリス、寒くないか?ほら」
○○「え?」
ハーツ君が差し出した手を見て首を傾げる。
すると彼は困ったように笑って、私の手を握った。
○○「ハーツ君?」
ハーツ「こうやって繋いでいた方が、お前が寒くないだろ?」
○○「うん、ありがとう」
(優しいな……)
少し顔を赤くした彼の手を握り返す。
(この手を、離したくない……けど、ハーツ君は今日プレゼントを贈りたい相手がいるんだよね)
○○「ハーツ君……プレゼントの準備はできたの?今日はクリスマスだけど……」
おずおずと、そう問いかけると……
ハーツ「え!そうなのか!?あ、そうか……だからお前……」
ハーツ君が私の手を握りしめてさらに顔を赤くさせた。
(どうしたんだろう……)
その後も私達は目的もなく冬のメゾン・マッドネスの街を歩き回った。
いつしか街は暗くなり、街路樹には冬らしいイルミネーションが輝き始めた。
お洒落な街ということもあり、恋人同士と思わしき人々の数も多い。
○○「……」
ハーツ「……」
(なんだか意識してしまって恥ずかしいな……)
今日はただ彼の様子を見に来ただけのはずだった。
なのにハーツ君は一向に私の手を離さず……
○○「あの、ハーツ君って、今日がアルバイトの最終日だったんだよね? だったらプレゼント、渡しに行かなくていいの?」
ハーツ「は!?」
すると、彼はなぜか目を見開いて視線を彷徨わせ始める。
(あれ……この反応、もしかして忘れてたとか?それともクリスマス当日に渡すことを知らないのかな……私が説明しなかったから?)
急に不安になって、これまで彼にしたクリスマスの話を思い出す。
その時だった。
ハーツ「お前、何言ってるんだ?クリスマスデートだろ!?」
○○「え……?」
彼の言葉に驚いて、私は歩みを止めてしまう。
ハーツ「えっ……て、そのためにアリスは俺を迎えに来たんじゃないのか!?」
○○「わ、私はハーツ君の姿が見れたらなって……」
ハーツ「え……」
(じゃあ、ハーツ君の渡したい相手って……)
粉雪の降る街の中、手を繋いだまま時間が止まる。
○○「……冗談、じゃないよね?」
ハーツ「俺のマジで本気な気持ちを冗談にしないでくれ!」
彼がぱっと私の手を離したかと思うと、両肩を強く掴まれた。
ハーツ「誰のために初めて働いたりしたと思ってるんだよ、お前のためだ!」
○○「……っ!」
こちらを見る彼の瞳には切実な想いが込められているようで……
私の胸は弾けそうなばかりに高鳴っていたのだった…―。