太陽最終話 3人の兄妹

薄紫色の花が、吹き抜ける風に優しくその身を揺らしている。

そこは、ホープとライト、そして〇〇が3人で幾度も遊んだ場所だった。

ライト「変わらないね、ここは」

ホープ「ああ……そうだな」

幼い頃の記憶が胸に押し寄せ、ホープの胸を切なく揺さぶる。

ふと……すぐ傍で、〇〇が無邪気に微笑んだ気がした。

ホープ「〇〇……」

その気配に名前を口にすると、そっと、ホープの手のひらが握られた。

ホープ「……!」

後ろを振り返れば…-。

〇〇「ホープお兄ちゃん」

ホープ「〇〇……!」

髪を風に柔らかに揺らしながら、成長した〇〇が微笑んでいた。

ホープ「〇〇……なのか?」

ホープは目を見開き、〇〇を呆然と見つめる。

〇〇は何も言わず、ホープにもう一度優しく笑いかけた。

そんな二人の様子に、ライトは幸せそうに目を細めて……

ライト「ホープ、〇〇。少し歩こう」

〇〇のもう片方の手を取って、花畑の中を歩き出した。

薄紫色の花弁が、風に乗って宙を舞う。

陽光が差し込む花畑は、ただただ穏やかで…-。

(時が、このまま永遠に止まればいい)

そう思いながら、ホープはまぶしい輝きを放つ太陽を見上げた。

その光に照らされたホープの姿が、あの頃のものへと変わっていく…-。

ホープ「こうしていると、まるであの頃みたいだな」

〇〇「うん、とても懐かしい。昔もこうして、お兄ちゃん達にお花畑に連れていってもらったんだよね」

ライト「そうだね。本当に久しぶりだ。 ……やっと、3人揃ったね」

それは、闇に飲まれながらもずっと……ホープが求めてやまなかった光景だった。

(これは……やはり、夢なのか? それとも…-)

ライト「ホープ?」

〇〇「お兄ちゃん? どうしたの?」

ホープ「……いや、なんでもない。 さあ、行こうか」

首を静かに横に振って、ホープは前へ歩き出す。

〇〇「ずっとこうして、お兄ちゃん達と手を繋いでいたいな」

ホープ「甘えん坊は変わらないな……〇〇は」

ライト「けど、ホープは〇〇には甘いから」

ホープ「お前だってそうだろう?」

ライト「うん。僕達の大切な妹だからね」

二人の兄の会話に、〇〇はこの上なく幸せそうに笑みを浮かべた。

〇〇「ありがとう。ホープお兄ちゃん、ライトお兄ちゃん」

〇〇が、ぎゅっと二人の兄の手を握る。

いつの間にか大きくなった〇〇の手に、ホープは切ない痛みを覚えた。

〇〇「また3人で会えた。私、すごく幸せだよ」

ホープ「ああ……俺もだよ」

(ここがどこだろうと、今がなんだろうと……そんなことはどうだっていい)

(今こうして二人がいてくれるだけで、俺は…-)

その思いを裂くように、ホープの意識が一瞬……暗闇に飲み込まれそうになる。

ホープ「……っ」

(……当然だ)

(本当は、俺はもう…-)

ホープ「……ごめんね」

ぽつりとつぶやくホープを、ライトと〇〇が切なげに見つめる。

ホープ「お前達はいつも……俺に光を見せてくれていたのに。 俺は…-」

二人に伝えたい思いがあるのに、それが上手く言葉にならない。

あとどれくらいこうしていられるか……焦燥の念に駆られながら、ホープは必死に言葉を探した。

だが…-。

ライト「もうやめよう、ホープ」

ホープ「ライト……?」

ライト「いいんだ。もう、終わったんだよ。君一人が苦しむのは、僕は嫌だ。 君との日々は確かにあって、今の僕達を形作っている。 僕に……〇〇に、幸せをありがとう。 僕は、君達と兄妹でいられて……本当に幸せだった」

ホープ「ライト……」

ホープのまぶたがじわりと、熱を帯びる。

だが最後まで素直になることはできず……ホープは柔らかに笑ってみせた。

ホープ「ああ。俺も、お前達と兄妹で、本当によかった」

〇〇「ホープお兄ちゃん……」

愛しい声がホープの名前を呼んだ、その時…-。

白い光がホープの体を包み込み、〇〇の手が離れた。

ホープ「〇〇……」

ひとときの夢の終わりを告げるかのように、ホープの姿がまた移り変わった。

〇〇が涙をこらえながら、ホープを一心に見つめている。

ホープ「……大丈夫」

今、ホープの胸に生まれてくるのは、温かな光…―。

(〇〇。大丈夫だよ)

ホープ「光はいつでも、お前の側にあるから」

やがてホープの視界は、真白に染まっていく…-。

薄れゆく意識の中で、ホープはライトと〇〇の声を聞いた。

『大好きだよ』

最愛の人達の笑顔と想いを、今度こそ胸にしっかりと刻みつけ……

温かな愛に包まれながら、ホープはゆっくりと、その瞳を閉じたのだった…-。

おわり。

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