太陽最終話 ささやきがわかる距離

グレアム君は、熱っぽい瞳を向けて、じっと私を見つめる。

(熱で……ぼんやりしているのかな)

(そんなに見つめられたら……)

〇〇「あ、あの、熱があるんだから、やっぱり横になった方がいいですよね」

グレアム「嫌だ。このままがいい」

〇〇「え……?」

まるで甘えるように、そっと身体を寄り添わせてくるグレアム君に、思わず胸が高鳴ってしまう。

〇〇「……こうしているだけじゃ、治らないですよ」

グレアム「治る必要は特にない。 書くべき原稿も、お前が来る前に全部仕上げた」

〇〇「そうなんですか……?」

グレアム「ああ。お前を、ちゃんと……歓迎したかったから」

いつもとは違う素直なグレアム君に、鼓動はどんどん早まって……

(こんなに近いんだから……ドキドキしてるの気づかれちゃいそう)

グレアム「無理してでも、かっこよくお前のこと……出迎えたかった。 それなのに、これじゃ駄目だ」

〇〇「グレアム君……。 そんなことない、すごく嬉しいです」

グレアム「でも……最後まで上手くできなかった上に、風邪で倒れて。 格好悪いにも、ほどがある」

グレアム君は悔しそうにそう言った後、力なくため息をつういた。

〇〇「そんなに無理しなくても良かったんですよ……?」

グレアム「無理したい。だって……お前だから」

〇〇「っ……!」

予想もしていなかった言葉に、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

すると……

グレアム「ん……」

グレアム君が苦しそうに、短い声を発した。

〇〇「あ、あの、本当に大丈夫ですか? ベッドで、ちゃんと横になった方が……」

と、その時…-。

グレアム「熱い……」

〇〇「っ……!」

グレアム君が熱い手のひらを私の頬に当てて、こつんと額をくっつけた。

グレアム「体が……熱い。特に、おでこ……」

すぐ目の前で、グレアム君が長いまつ毛をしばたたかせる。

突然の出来事に驚いて、何もできずにいると……

グレアム「お前のおでこ……冷たくて気持ちいい」

グレアム君が、幸せそうに微笑んだ。

(グレアム君……)

グレアム「今朝から、熱っぽいのがきつくて……。 けど、お前と一緒に過ごしたかったから……」

〇〇「そんなふうに、無理しなくても……。 グレアム君が風邪で寝込んでても、ちゃんと傍にいましたよ?」

グレアム「だって、驚かせたいって思ったし……。 寝てるなんて、そんなの……格好悪い」

グレアム君の熱っぽい吐息が頬にかかって、熱くて……

まるで、魔法にでもかけられたみたいに、動けなくなって……

〇〇「格好悪くなんかないです。それに今、私、すごく驚いてますし……」

グレアム「え……? どうして?」

〇〇「だって、グレアム君とこんなふうに、近くで……」

グレアム「近くで、何……。 言わないと、駄目だよ」

可愛らしいと思えば、不意に大人びた口調で、駄目だよと言い切る。

子どもと大人の狭間で揺れる彼に、どんどん心が奪われいくようだった。

〇〇「……見つめ合ってる、から……」

グレアム「キス、しそう?」

〇〇「っ……!」

グレアム「ふふっ、冗談だよ。 変だな。熱があると、何でも上手くいきそうだし、何でも言える気がする」

〇〇「あ、あの、グレアム君……」

グレアム「逃げちゃ駄目だ。 もう少しこうしていたい……いいよね?」

熱に潤んだ瞳で、そんなことを言われて……断れるはずがない。

〇〇「はい……もう少しだけ」

戸惑いながら頷くと、グレアム君の熱っぽい笑いが、幸せそうに咲いたのだった…-。

おわり。

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