太陽SS 受賞パーティ前日

シャーロット文学賞の、受賞パーティ前日…―。

俺は、お祖父様と共に自室にこもり、○○に体験してもらうミステリーツアーの、最終打ち合わせをしていた。

グレアム「……お祖父様。やっぱりここは、もう少し練り直した
方が……」

グレアムの祖父「ふむ……しかし、もう時間もないからなあ」

グレアム「それは、確かに……うーん、でも……」

(ミステリー作家の名に懸けて、絶対に失敗はしたくないからな
……)

(何より、○○のためのミステリーツアーなんだし……)

(くそ……せめて、もう少し時間があればよかったんだけど……)

受賞パーティの準備や、原稿の執筆に追われていたせいで、ミステリーツアーの計画のために捻出できた時間は、ごくわずかだった。

(最大限の努力はしたつもりだけど、どこかに綻びがあったら大変だし……)

(やっぱり、もう一度よく練り直して……)

そう思いながら、ティーカップに手を伸ばした、その時…―。

グレアム「……っ」

グレアムの祖父「ん……? グレアム、どうした?」

頭を押さえる俺を、お祖父様が心配そうに覗き込む。

グレアム「い、いえ、何でもありません」

(少し、くらくらするけど……)

(この程度で、休んでなんかいられるものか)

グレアムの祖父「ふむ、そうか? ならばよいが……。 まあ、とにかく。さっきの練習だって、上手くいっただろう」

グレアム「それは、そうですが……」

お祖父様の言う通り、メイドを○○に見立てて行った無事に成功した。

けれど……

(……あいつに、格好悪い姿を見せるわけにはいかないんだ)

(懸念点は、今の内にすべて潰しておかないと)

グレアムの祖父「グレアム……。 大丈夫だ、明日もきっと成功する」

お祖父様はそう言った後、ソファから立ち上がり……

未だ納得がいかず、眉間に皺を寄せる俺の肩をそっと叩く。

グレアムの祖父「さて、もう夜も遅い。風呂に入って寝なさい」

(これ以上は、言っても仕方がないか)

(お祖父様は、言い出したら聞かない人だし……)

諦めたように小さくため息をついた後、俺はお祖父様に笑顔を向ける。

グレアム「はい、わかりました。お祖父様、おやすみなさい」

グレアムの祖父「ああ、おやすみ」

俺は、お祖父様の背中を見送った後……

深いため息をついてソファに倒れ込んだ。

グレアム「……。 ○○……」

(やっと、お前に会えるのに……)

(それなのに、100年に一度の天才を呼ばれる、この俺が……)

グレアム「……この俺が、お前に無様な姿なんて、見せてたまるか……」

俺はそうつぶやいた後、ソファから身を起こす。

(やっぱり、今からもう一度練り直そう)

(お祖父様には、明日の朝に共有すれば…―)

グレアム「……っ」

体を悪寒が走り、思わず身を震わせる。

グレアム「もしかして、これ……」

ふらつく頭に、寒気。そこに、わずかな喉の痛みも加わり……

グレアム「以上の証拠から、導き出される犯人は……。 風邪、だな。 ……」

(……無様だ……)

(明日はお前を迎え入れる、大切な日なのに)

グレアム「くそ……」

俺はふらつく頭を押さえながら、ソファに背にもらたれて天井を仰ぎ見る。

(……せめて、誰にもばれないように振る舞わないとな)

(体調管理もできない子どもだと思われたら、敵わないし……)

グレアム「……。 ……大丈夫。俺は100年に一度の天才作家、グレアムだ。 授賞式も、ミステリーツアーも、絶対、完璧にこなしてやる」

目を閉じながら、自分に言い聞かせるようにつぶやく。

そして……

グレアム「……よし」

目を開いた後、俺は何事もなかったかのように立ち上がり、しっかりとした足取りで、バスルームへと向かったのだった…―。

おわり。

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