太陽7話 お前という支え

フォルカーさんが今、意固地になってまで解決しようとしている仕事の問題は、詳しい事情によると、エリックさんに陥れられたせいだと他の部下の方から聞いた。

(何とか力になりたいけど……)

フォルカーさんは今では、自室に全て仕事を持ち込み、引きこもってしまっている。

今日もお茶を持ち、フォルカーさんの部屋を訪れるけれど…-。

〇〇「良ければ、お茶を飲んで休憩してくださいね」

フォルカー「……今は無理だ。本当に気にしないでくれ。 そんなことをされると、気にかかるし胸が痛む」

〇〇「……気にしてもらえるんだったら、ぜひ少しでも休憩してください。 私なりに……フォルカーさんが心配なんです」

フォルカーさんが、書類から一度も上げなかった視線をこちらへ向けた。

疲れているせいか、目の下にくまができているように見える。

フォルカー「……」

(差し出がましかったかな……)

けれど、フォルカーさんはカップをそっと手に取って……

フォルカー「……いい香りだ」

〇〇「はい、フォルカーさんはこのお茶がお好きだと聞いて……」

フォルカー「いただこう。付き合ってくれるか」

〇〇「はい、もちろんです」

(良かった……!)

嬉しくて胸が弾むのを誤魔化せずに、笑顔がこぼれる。

フォルカーさんは、疲れた目頭を指先で押さえながらも、安心した顔でお茶を飲んでくれた。

……

それからも私は一心不乱に仕事を続けるフォルカーさんのもとへ、少しでも息抜きになればと足を運び続けた。

それから数日…-。

フォルカー「……これで完璧だ」

フォルカーさんが、全ての書類を机に置いてつぶやいた。

〇〇「終わったんですか?」

フォルカー「ああ、これでもう問題ない」

つきものが取れたような顔で、フォルカーさんは安堵の笑みを浮かべる。

フォルカー「少しだけ……休もう」

〇〇「はい、良かったです。そうしてください。 じゃあ私は……」

フォルカー「いや、ここにいてくれ。お前がいると、落ち着く」

フォルカーさんは、ソファまで歩きながら私を呼ぶような仕草をする。

優しい声色とその動作にどきりとしながら、私もソファまで歩み寄った。

そして…-。

フォルカー「……安心したら、ひどく眠たくなってしまった」

〇〇「っ……」

フォルカーさんが、私のひざの上に頭を乗せ、心地よさそうに目を閉じる。

ふわりと香ったインクの香りと、フォルカーさんの香りにとくんと鼓動が跳ねた。

フォルカー「お前に……礼をしたい」

〇〇「お礼だなんて……」

フォルカー「世話になった。礼をしなければ、俺の気が済まない」

くっきりと疲れが滲む顔で、今にも眠ってしまいそうな顔で……

〇〇「……じゃあ……いつか言っていた、ルビくんの散歩がしたいです」

柔らかな髪を撫でると、気持ち良さそうにフォルカーさんが瞳を閉じる。

フォルカー「ルビの散歩、か。それはいい……必ず、そうしよう……」

フォルカーさんは安心したように微笑みながら、穏やかな眠りに落ちていった。

〇〇「……お疲れ様です」

起こさないように小さな声で呼びかけてから、私はそっと彼の眼鏡を外した…―。

……

それからしばらく……

部屋の入り口から聞こえる物音で頭を上げると。部下の方達が心配そうに部屋の中を見ているのが見えた。

若い事務官1「あ、す、すみません。どうしても気になって……」

〇〇「じゃあ、起こさないように静かに……」

そっと部屋へ入ってきた面々が、フォルカーさんの寝顔を見て微笑む。

眠ってしまった顔は、まだどこかあどけなさを残していて、仕事中のフォルカーさんとはまるで別人のようだった。

エリック「……」

その面々の中にいたエリックさんの憂いをたたえた瞳が、じっとフォルカーさんを見つめている。

エリック「まさか……何も言わないなんて」

〇〇「エリックさん。フォルカーさんは誰も咎めないと……全て上司である自分の責任だと言っていました」

エリック「……」

エリックさんは、しばらく無防備に眠るフォルカーさんを見つめた後……

エリック「……器の違いが出ただけだったな」

そう言って、フォルカーさんと同様、つきものの取れたような顔を見せたのだった…-。

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