太陽7話 最凶スペシャルディナー

ウィルさんに案内されたのは、レストランの奥にあるVIPルームだった。

蜘蛛の巣で編んだようなクロスのかかったテーブルへ着き、彼が指を鳴らす。

ウィル「こちらのお嬢さんに最凶スペシャルディナーを頼むよ♪」

ゾンビウェイター「……うぅ……かしこマリましタ」

特殊メイクを施されたウェイターが部屋を後にする。

○○「あの……特別なディナーって」

ウィル「最凶スペシャルディナー。各国の王子や来賓達をもてなす際の特別メニューだよ。 もちろん関係者以外で口にするのは、君が初めてだけれどもね」

(初めてなのは嬉しいけど……いったいどんなメニューなんだろう)

期待と不安が混じる胸を押さえながら、料理が運ばれてくるのを待つ。

すると先ほどのウェイターがトレーにグラスを二つ乗せて戻ってきた。

ゾンビウェイター「食前酒ノ……館ヲ濡らす恐怖――という名のノンアルコールくらんべりー酒デございマス……」

○○「!!」

テーブルに置かれたグラスを見て、思わず口元を手で覆った。

(何これ、まるで血みたいな色……)

向かいに座るウィルさんが、目を眇める。

ウィル「この食前酒はね、僕の映画で最初にこの洋館に訪れたカップルが……」

○○「カップルが……?」

ウィル「……」

ウィルさんがうつむき黙り込んでしまい、緊張が全身を支配していく。

(ドキドキする……怖い……!)

ぎゅっと、唇を引き結んだその瞬間…―。

ウィル「はい、この続きは実際の映画でね♪」

○○「えっ」

素知らぬ顔で、ウィルさんは血のような液体をひと口飲んだ。

○○「……教えてくれないんですか?」

ウィル「そりゃ君、先の展開を知ったら映画が楽しめなくなっちゃうし? ……ほら、飲んでみてよ♪」

(と、言われても……)

真っ赤な食前酒はまるで血そのもののようで、喉に通すことがためらわれた。

ウィル「……○○?」

(手伝うって言ったのは、私だし……)

私は喉を鳴らすと、彼に倣って一気にグラスをあおった。

どろりとした感覚が口内を支配し、甘いのか苦いのかすらわからない。

(全然味がわからなかった……)

その後も、ゾンビや全身を包帯に巻かれたメイドが次々と皿を運んでくる。

ウィル「これは、いわくありげな内臓肉のソテー、悲鳴まじりのザクロソース添え」

○○「いわくありげに、悲鳴ですか……」

皿に乗せられた肉からはいい匂いがするものの、毒々しいソースの色に視覚と嗅覚が混乱する。

ウィル「ちなみにこのメニューはね――」

○○「せ、説明はもういいです」

耳を塞ぎたくなるような気持ちで言葉を遮って、ひと口大に切った肉を口に運ぶ。

(これ……おいしいのかな?)

(なんだか気分が悪くて、もう味どころじゃない……)

ゆっくりと咀嚼するけれど、やっぱりどうにも味わうことができなくて……

ーーーーー

ウィル「じゃあ君には特別なディナーをごちそうするから感想を教えてもらえないかな?」

ーーーーー

(駄目だ、ちゃんと感想を言わないと。ウィルさんが頑張ってるのに)

ウィル「○○……」

○○「あ…―」

顔を上げると、ウィルさんがじっと私の顔を見つめいる。

ウィル「……」

○○「あの…―」

(どうしよう、ウィルさんをがっかりさせてたら)

慌てて言葉を出そうとした、その時…―。

ウィル「やっぱり君は最高だ!!!」

ウィルさんの高らかな声が、レストラン内に響き渡った…―。

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