太陽最終話 戸惑いの演奏会

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ダルファー『絶対に来て欲しいんだよねえ。僕、一生懸命歌うからさ』

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ダルファーから誘われた演奏会は、城の庭で開かれるということだった。

時間通り、夕暮れに庭に訪れると…-。

(たくさん人がいる……)

すでにたくさんのお客さんで、会場はいっぱいになっている。

女性1「今日はダルファー様がお歌いになられるんですって!」

女性2「あの美しい歌声が聴けるなんて、楽しみだわ」

(……やっぱり、皆ダルファーの歌が好きなんだ)

周りの声に、なんだか嬉しい気持ちになる。

その時…-。

男性1「ねえねえ」

急に声をかけられて、肩を掴まれた。

男性1「一人なら、オレと一緒に見ない?」

〇〇「……すみません、結構です」

(……嫌だな。ダルファーの演奏会なのに)

声をかけてきた男性の誘いを断り、その人から離れるようになるべく前の席に腰を下ろした。

(あ、ダルファー!)

席に着くと、ダルファーと他の歌い手のメンバーがステージに並んでいた。

司会「では、早速始めます」

司会の人の言葉もそこそこに、ダルファーがステージの中央に進む。

ダルファー「では、さっそくだけど……」

まずは、ダルファーの独唱から始まった。

(すごい……)

相変わらず天上の歌声としか言いようのない綺麗な音域がのびやかに広がる。

ダルファーに続いてコーラスも加わり、私はうっとりとその歌声に聴き惚れた。

女性1「本当に素敵な歌声」

女性2「ええ、本当に……それに、夜が楽しみ。また後で誰かを誘ってくれるんじゃない?」

女性1「ねえ! それも楽しみの一つよね~」

〇〇「……」

その会話を聞いて、胸がかすかに軋んだ。

(仲良くなって……また、ダルファーが傷つくようなことにならないといいけど……)

そんなことを思っていると、背後から肩をがしっと掴まれた。

男性1「ね~彼女~。寂しそうにしてるね。君もダルファーに振られた一人?俺が慰めてあげよっか?」

見ると、さっき声をかけてきた男性が、ニヤニヤと笑いながら私の真後ろに座っていた。

(ゆっくりと、ダルファーの歌を聴きたいのに……)

〇〇「け、結構です。そんなのじゃありません!」

思わず、きつく言い返してしまう。

男性1「……おっかねえ女。なあ、いいじゃねえか」

〇〇「……!」

顔を寄せられ、嫌な息がかかる。

(離れたいけど……今はダルファーの歌の途中だし……)

その時、今まで滑らかに続いていた歌声がピタリと止まった。

〇〇「え……!」

ステージで、ダルファーが眉をひそめながら私達の方を見ている。

(どうしよう……うるさくしたから……)

申し訳なさと気恥ずかしさで、うつむいてしまうと……

ダルファー「や~めた」

突然、ダルファーは長い髪を手で後ろに払ってステージから降りた。

〇〇「えっ……」

ステージから離れ、やってきたのは私の前……

〇〇「ダルファー……」

その時、一瞬ダルファーの瞳に燃え盛る炎が宿った気がした。

その視線の先にあるのは、私の真後ろの男性の姿…-。

男性「……あ」

ぴくりと、男性が震える。

ダルファーは、私の肩を掴んでいた男性の手をさっと振り払い……

ダルファー「行こう」

私の返事を待たずに手を引いて、ぐんぐん歩きだす。

(怒らせてしまった……?)

胸に不安を抱きながら、私はざわめきを増す会場を後にした…-。

部屋に入っても、ダルファーは何も話してくれない。

〇〇「あの、ごめんなさ…-」

耐え切れずに、口を開いたその時……

ダルファー「気安く触りやがって、あのクソガキ」

〇〇「え……?」

一瞬、自分の耳を疑うけれど……

ダルファー「なんでもないよ。全く……ステージから見てて、気が気じゃなかったんだからね」

和やかな表情を見ると、さっきの言葉が聞き間違いかと思ってしまう。

〇〇「え、あの」

ダルファー「あの男のことだよ。危うく周囲を焼き尽くすところだった」

〇〇「???」

ダルファー「だってキミは僕のものなのに。他の男に触れさせるんだもん。歌うどころじゃなかったよ」

〇〇「僕のもの?」

ダルファー「そうだよ」

〇〇「で、でも、ダルファーには、たくさんの女の子がいるんじゃ……」

ダルファー「ん? 他の女の子は、もういいんだ。だってキミが現れたんだからね」

〇〇「……」

ダルファー「今度キミだけのために歌ってあげるよ。僕はもう、キミのものだからね」

すぐ前に立ったダルファーが、私の顎をくいっと指で持ち上げる。

少し顔を傾けると、長い絹の糸のような髪がさらさらと流れた。

ダルファー「キミを選ぶために、これまでがあったって気がするよ、〇〇ちゃん」

見とれるほどの甘い微笑みが浮かぶ。

その眼差しを受け止めても、まだ信じられずに目を見開く。

〇〇「本当に……?」

ダルファー「信じさせてあげるよ。一晩じゅうかけてもね」

大事なものに触れるように、彼が私をそっと抱きしめる。

その熱が、ダルファーが本当に私のことを想ってくれていることを教えてくれた。

(嬉しい……)

いつの間にこんなに惹かれていたのか……喜びに心臓が軽快なリズムを刻み出す。

ダルファー「キミに振られないように、頑張るよ」

まるで光る歌声に包まれるように、心の内側から満たされていった…-。

おわり。

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