太陽SS 僕と君の未来

厳かな式典が終わりを告げ、参列者達がにわかに賑やかさを増す……

(〇〇は、どこだろう)

パビリオンを一緒に巡る約束をしていた僕は、彼女の姿を探していた。

その時…-。

(この願いの声は……〇〇?)

僕と早く会いたいという声が、どこからか届く。

(僕もだ)

くすぐったい気持ちが胸に広がり、笑みがこぼれそうになった。

(たくさんの人がいるのに……)

駆け寄りたい衝動を抑えながら、願いが聞こえる方向を探す。

やがて、人込みの中に〇〇の姿を見つけた。

(周りを見回して……君も僕を探してくれているんだな)

シュテル「〇〇」

名前を呼んだ瞬間、彼女が花の咲いたような笑顔を浮かべる。

〇〇「! シュテルさん、会えてよかったです。 でも、私のいる場所よくわかりましたね」

シュテル「君が呼んでくれたから」

〇〇「あ…-」

僕の答えに、〇〇は恥ずかしそうに顔をうつむかせた…-。

……

見つめ合う僕と〇〇の頭上には、宝石をちりばめたような夜空が広がっている……

僕は、彼女を星がよく見える場所へと案内していた。

(ここにいると、君と出会った時のことを思い出す)

あの時と比べると、今の僕は随分と変わったように思えた。

降り注ぐ星の光に見守られながら、僕は溢れ出す想いを言葉に変える。

シュテル「君と一緒にいたい。君のことを知りたい……。 〇〇といると、新しい願いがどんどんと生まれる……こうして、今も」

(初めての感情や経験ばかりで、戸惑うこともあるが)

(でも……それも幸せに思う)

シュテル「いつの間にか、僕は欲張りになったみたいだ」

彼女は僕にそっと微笑みかけると、言葉の続きを引き取った。

〇〇「じゃあ、私も欲張りかもしれません」

シュテル「え?」

〇〇「シュテルさんの願いは全部叶えたいと思うから」

シュテル「君が、僕の願いを?」

〇〇「はい。シュテルさんの願いは、すべて……私の願いでもありますから」

ためらいなく答える彼女の一方で、僕は言葉に詰まってしまう。

シュテル「君は、本当に……」

(そうしてどこまでも優しい君だから……僕は変わったんだ)

想いを言葉にしきれなくなり、僕は彼女の腰を引き寄せた。

愛しいという想いに駆られるがまま、〇〇と唇を重ね…-。

シュテル「……」

求め合うような口づけを終えた途端、気恥ずかしさが湧き上がる。

見れば、彼女もまた恥ずかしそうに微笑んでいた。

その瞳には、僕の面映ゆい表情が映り込んでいて…-。

シュテル「君の瞳に映った僕は、君と同じ顔をしている」

(お互いに、熱に浮かされてしまったらしい)

シュテル「……僕達は、同じ気持ちみたいだな」

〇〇「ふふ……そうですね」

僕は、彼女の柔らかな髪を慈しむように撫でる。

〇〇「すごく嬉しいのに……なんだかくすぐったいです」

〇〇が、はにかみながら肩をすくめる。

幾度となく見てきたはずなのに、彼女のかわいらしい仕草から目が離せない。

シュテル「ああ。この感情に名前があるのか、僕にもわからない。 だけど……今、これだけは伝えたいと思う」

僕は〇〇の手を取り、そっと傍へと引き寄せた。

シュテル「ありがとう、〇〇。僕と出会って、同じ時を過ごしてくれて。 君が、今の僕の始まりだ」

彼女の存在を確かめたくて、繋いだ手を握りしめる。

(君と出会う前の方が、時間は長いはずなのに……)

(君がいない未来なんて、もう考えられない)

〇〇「……私だって同じです。 私の方こそ、たくさんのありがとうを…伝えたいです」

〇〇は胸がいっぱいなのか、そこで言葉を詰まらせた。

何かを伝えようとしては声にならず、僕を潤んだ瞳で見上げる。

シュテル「……充分だ。 言っただろう? 君の光は、すべて僕に届いているって」

(僕は、それを全部受け止めるから)

〇〇を抱きしめた、次の瞬間…-。

〇〇「あっ!」

僕と〇〇の真上で、流星が夜空に美しい弧を描いた。

シュテル「本当に、君と出会った夜みたいだ。 ……ここから、君と僕の未来は始まるんだな」

(君には、たくさんの心配をかけてきたと思う)

これからの未来にも、何が待っているかわからない。

(だが、僕は君と共に未来を歩んでいきたい)

(残っている星屑は、僕と君で……)

(二人で大切にしていこう)

彼女をさらに抱き寄せ、二人の体で星屑時計を優しく包み込む。

〇〇の笑顔の向こうに、降り注ぐ流れ星が見えていた…-。

おわり。

<<太陽最終話||月覚醒へ>>