太陽8話 助けになりたい

漆黒の空に、月が不安げに淡い光を宿している…ー。

城を追われた私達は、街へと下りていた。

けれど、その道すがら…

(アポロ…様子がおかしい?)

アポロは呼吸を荒くして、肩で大きく息をしていた。

アポロ「…っ…くそっ、頭が回らん…!!」

○○「アポロ…!」

よろけそうになるアポロの体を、慌てて支える。

私の手をはね除けようとしたアポロの手が、力なくうなだれる。

○○「少し休みましょう。体調が悪いようです」

アポロ「俺は…王たる男にならねばならんのだ…」

○○「…はい」

うわごとに近くなりかけたアポロの言葉に、ただ深く頷いた。

アポロ「城以外に…王が帰るところなどない…なぜだ…。 なぜ、我が城が…奪われねば、ならんのだ…!」

○○「アポロ…落ち着いて」

熱くなる一方の彼の体を落ち着かせようと背中に手を添えた、その時…ー。

街の人1「アポロ…様?」

街の人2「ああっ、アポロ様だよ!」

やはり、アポロの姿はとても目立つようで、街の人々が集まり始めてしまった。

街の人3「お加減が悪いのかしら。どうなさったんです!?」

一度集まれば、夜とはいえすぐに大勢の人々が集まり始める。

○○「あの、これは…」

どう説明すればいいか、言葉を迷う。

街の人達は、互いに顔を見合わせ、何かを思案していたけど…ー。

街の人4「アポロ様!どうかご恩を返させてください」

街の人3「城での話は聞き及んでおります。私達のところにまで、アポロ王子を討てと伝達が…」

アポロ「なんだと…」

街の人4「ですが、私達はあなたの力になりたい…!」

街の人2「フレアルージュのこの領は、アポロ様のお力で今まで守られていたのですから!」

アポロの様子に、皆が口々に手を差し伸べる言葉を言い始める。

(…アポロのことを、皆わかってくれてるんだ)

嬉しさに、胸が熱くなる。

けれど…ー。

アポロ「ええい、うるさいっ!」

アポロの、振り絞ったような怒号が夜の街に響いた。

○○「アポロ!どうか落ち着いて…」

アポロ「貴様まで…俺に、哀れみの目を向けるつもりか…!」

○○「いいえ。お願い、聞いてください」

○○「アポロならきっと、この人達の気持ちがわかるはずです」

アポロ「…わかるものか」

○○「アポロの助けになりたいんです。自分達を守ってくれる、大切な人だから」

アポロ「…」

○○「私だって…」

私の顔を見たアポロが、はっとしたように表情を変える。

アポロ「○○…」

そして、何かを諦めたような苦笑いをふっとこぼした。

アポロ「好いた女を泣かせるなど…俺は、どこまで生き恥を晒すというのか」

瞳に溜まっていた涙を、アポロの指先がこの上なく優しくぬぐってくれる。

(好いた…?)

きょとんとする私に、アポロのまっすぐな眼差しが向けられる。

アポロ「なんだその顔は。○○は、俺の妃だろう。好いているに決まっている」

さも当たり前のように告げられた言葉は、私にとっては当たり前じゃなくて…

○○「ま…まだ、妃の話をしてるんですね」

アポロ「好いてると言ったのは、初めてだがな」

○○「…!」

小さく笑って、アポロが私の髪を撫でる。

(嬉しい…)

月明かりが、アポロの横顔を優しく照らす。

彼の微笑みが、私の胸に甘やかな感情を生んだのだった…ー。

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