太陽最終話 私のヒーロー

小屋を出ると、雨上がりの澄んだ夜空に美しい星々が瞬いていた。

〇〇「さっきのは通り雨だったみたいだね」

ヘラクレス「よかった! そろそろ時間のはずだけど……」

ヘラクレスと肩を並べ、夜空を見上げていると……

次の瞬間、星が尾を引くように煌めいて、夜空を流れた。

(あっ、流れ星……!)

ヘラクレス「〇〇ちゃん、見て!」

ヘラクレスが指をさした方を見ると、次々に星が流れ出す。

〇〇「綺麗……」

見たこともない数の流星群に心奪われ、思わず息を呑んだ。

ヘラクレス「星が雨みたいに降ってくるね!」

〇〇「うん……本当に素敵」

流星群に見とれていると、ヘラクレスが雨露を払った草の上に座り込んだ。

ヘラクレス「〇〇ちゃんもおいでよ」

〇〇「うん、ありがとう」

ヘラクレスに呼ばれ、彼の隣に腰かけようとすると……

ヘラクレス「そこだと濡れちゃうよ。 キミの場所は、ここ」

(えっ……)

そう言って、ヘラクレスは自分の膝の間に私を座らせた。

突然近づいた距離に、心臓が痛いほど早鐘を打ち始める……

ヘラクレスは、私を背中から包むように優しく腕を回し……

私の耳元に唇を寄せ、いつもより少し低い声で囁いた。

ヘラクレス「星、見える? オレに寄りかかっていいよ」

ヘラクレスは私を支えるように抱いて、空を見やすくしてくれる。

ヘラクレス「痛くない? 力加減、間違えてたら教えてね」

心配するヘラクレスを、そっと肩越しに振り返る。

〇〇「もっと力を入れても大丈夫だよ。私、簡単に壊れたりしないから」

小さく笑いかけると、ヘラクレスは困ったように眉を寄せた。

ヘラクレス「ダメだよ、そんなこと言っちゃ。 キミのこと、もっとぎゅってしたくなる……」

そうこぼしながら、ヘラクレスが私の肩に額を乗せる。

(ヘラクレス……)

彼の優しい温もりに、安心して身を預けた。

〇〇「ずっと星が降り止まない……本当に綺麗だね。 ヘラクレスが言った通り、一度見たら忘れられない景色だな」

ヘラクレス「この流星群、母さんが好きだったんだって」

私の耳元で、ヘラクレスの声が優しく響く。

ヘラクレス「オレが物心つくまえに、母さんは死んじゃったから。 オレもいつか、大好きな人と流星群を見たかったんだ」

(大好きな人って……)

ヘラクレス「だから、キミと一緒に見られて、本当に嬉しい」

その言葉の意味を考えると、頬がじわりと熱くなってきてしまう。

ヘラクレス「それにしても、今夜の星は特別綺麗だなぁ。 この特別な時間が、ずっと続いてほしいくらい」

心から幸せそうに話す彼に、愛しさが込み上げる。

〇〇「うん……そうだね」

(そう見えるのは、ヘラクレスと一緒だから……)

そんなことを思いながら、しばらく二人で星を眺めていると……

ヘラクレス「……」

横顔に注がれている視線に気づき、ふと後ろを振り返る。

ヘラクレスは流星群ではなく、私を見つめていた。

〇〇「ヘラクレス……星を見ないの?」

ヘラクレス「うん……キミの嬉しそうな顔が見たくて」

私の顔を覗き込むように、ヘラクレスが柔らかく頬に触れる。

ヘラクレス「それに……もっとキミに近づきたい」

(ヘラクレス……)

彼と向き合って視線を交わし……

ゆっくりと顔を寄せて、こつんとおでこを合わせる。

ヘラクレス「へへ……」

私の両手を取り、ヘラクレスが幸せそうに笑った。

ヘラクレス「オレさ、子どもの頃からずっと一人だったから。 自分の力を持て余して、大切なものを壊してしまうのが怖いけど……」

そっと目を伏せて、ヘラクレスが静かに語る。

ヘラクレス「オレなりに、皆を……キミのことを守っていきたいと思う」

(ヘラクレス……)

ヘラクレスを見つめ、私も静かに笑みを返す。

(誰よりも優しくて、勇敢で、力持ちなヒーロー……)

(いつの日か、彼が心から笑える日が来ますように)

空に投げかけた祈りは、幾筋もの煌めく星と共に流れていく。

二人で見上げた流れ星の夜に、明るい未来を願い続けた…-。

おわり。

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