太陽最終話 花に愛を誓って

ヴァイリーさんの大きな手が、私の背を優しく包み込んでくれる…-。

ヴァイリー「……ありがとな」

彼は抱きしめていた腕を解き、今度はそっと私の両頬に手を添えた。

ヴァイリー「大切に想ってくれてるって、すっげー……嬉しいよ」

〇〇「あ……」

改めてそう言われ、頬がじわりと熱くなる。

けれど、それでも私はもう一度口を開いた。

〇〇「ヴァイリーさんのことが……好き、なんです。 獣化の呪いは、真実の愛で解けると本に書いてありました。 私はこんなにヴァイリーさんのことを想っているのに……どうして」

彼の姿を見ていると、呪いの理不尽さに怒りが湧いてくる。

ヴァイリー「……」

そんな私を、ヴァイリーさんは黙ったまま辛そうに見つめていた。

すると…-。

執事「……ヴェリティアでは、愛の告白に、誓いの花を添える風習がございます。 ヴァイリー様、〇〇様、その花と共に愛を誓われてはいかがでしょう」

控えていた執事さんがそう言って、私はハッとする。

(し、執事さんもいたんだった……)

火がついたように顔が熱くなるけれど、ヴァイリーさんは私を離さないまま、真剣な表情で頷いた。

ヴァイリー「〇〇……」

彼はまっすぐに私を見つめ……それから、少し不安そうに眉尻を下げる。

ヴァイリー「オレと一緒に、花を摘みに行ってくれるか?」

〇〇「……もちろんです」

しっかりと頷くと、ヴァイリーさんは嬉しそうに目を細め……

私の額に、触れるだけのキスを落としたのだった…-。

……

穏やかな光が降り注ぐ花畑には、この国で愛を誓う時に使うという、白く可憐な花が揺れていた。

互いに花を摘み、美しい風景の中で向かい合う。

(改めて顔を合わせると……なんだか少し恥ずかしい)

熱くなる頬にうつむくと、ヴァイリーさんが花を手に、そっと口を開いた。

ヴァイリー「……ここまで来て、オレが言わねえワケにはいかないよな」

ゆっくりと顔を上げた彼の瞳に射すくめられ、ドキリと胸が大きく跳ねる。

ヴァイリー「オレはオマエのことが好きだ。多分、初めて会った瞬間から……オマエに惹かれてた。 呪いのこともあったし、あのまま目が覚めなくても……なんて、思ったりもしたけど。 気づけば、オマエとずっと一緒にいたいって……そう強く、願うようになったんだ」

〇〇「ヴァイリーさん……」

彼の言葉がひとつひとつ胸に落ち、胸が熱くなった時…-。

〇〇「え……?」

手に持っていた白い花が、ふわりと色を変え始めた。

美しい赤に染まっていく花を、私は呆然と見つめてしまう…-。

ヴァイリー「オレ達の愛が、真実の愛だって証……だと、思いたい」

私達は互いに見つめ合うと……そっと静かに、赤く染まった花を交換した。

ヴァイリー「この花を……オレ達の愛を、二人でずっと大切にしよう」

〇〇「はい……!」

ヴァイリー「〇〇がくれた愛を力に変えて、オレはこの国を立派な国にする。 だから……〇〇。これからもずっと、オレの隣にいてくれないか」

〇〇「もちろんです。ヴァイリーさんとこの国を……傍で見守らせてください」

美しい赤に染まった花が、私を勇気づけてくれる。

〇〇「ううん、見守るだけじゃない。私もあなたと、この国の力になれるように頑張ります」

ヴァイリー「オマエって…-」

ヴァイリーさんの手が私に伸びて、持っていた花ごときつく抱きしめられた。

〇〇「く、苦しいです……」

ヴァイリー「あ……わ、わりぃ」

一度はふっと力を緩めるけれど、彼はまた深く私を抱き直して…-。

ヴァイリー「けど……離したくねえから」

〇〇「……はい」

愛を誓う私達の手の中で、一層赤く染まった花は、それからいつまでも甘い香りを漂わせ続けていた…-。

……

それから…-。

交流会は無事に開催され、招待客達との晩餐会が始まった。

皆の前に立つヴァイリーさんの広い背中を、私は少し後ろから見守っていた…-。

ヴァイリー「今晩は、集まってくれてありがとう。この交流会が皆にとって意義のあるものになったと信じてる。 オレはこの国を、もっと開かれた国にしたいんだ」

集まった人々の顔をゆっくりと見渡し、彼はしっかりと言葉を継ぐ。

ヴァイリー「獣人であることを誇り、他の種族とも積極的な交流を持とう。 オレ達の力は、世界に役立てていけるはずだ!」

ヴァイリーさんの魂がこもる言葉に、会場が湧く。

どこからともなく鳴り始めた拍手は、やがて会場全体を震わせるほどの大きさへと変わっていった。

(よかった……)

それは、彼が理想への最初の一歩を歩んだ証……

力強い歩みと共に、私も自分の心に誓いを立てた。

(何があっても……ヴァイリーさんと、ずっと一緒に)

頼もしく凛々しい彼の姿を見つめ、私は彼と作るこの国の未来に、思いを馳せた…-。

おわり。

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