太陽SS 愛の証を胸に

白い花びらが風に吹かれ、まるで微笑むように揺れている…-。

そんな花に囲まれながら、オレはあの時の彼女の言葉を思い出していた。

―――――

〇〇『私、ヴァイリーさんが好きです。こんなに大切に想っているのに……どうして』

―――――

(ずっと……苦しませてた)

(こんなにオレのこと想ってくれてるなんて)

まるで彼女のように美しく、そして力強く咲く花をそっと手折る。

(自分勝手だったな、オレは)

やるべきことをやり切って、それを〇〇に見てもらって……

彼女の気持ちも考えないで、独りよがりな満足感を得ようとしていた。

ヴァイリー「……ここまで来て、オレが言わねえワケにはいかないよな」

(オレが、本当に望むことは)

(オレの本当の気持ちは…-)

意思を固めて、ゆっくりと顔を上げる。

ヴァイリー「オレはオマエのことが好きだ。多分、初めて会った瞬間から……オマエに惹かれてた。 呪いのこともあったし、あのまま目が覚めなくても……なんて、思ったりもしたけど。 気づけば、オマエとずっと一緒にいたいって……そう強く、願うようになったんだ」

(オレはオマエとの未来を望む)

〇〇「ヴァイリーさん……」

彼女の瞳がうっすらと潤む。

(……オマエを、愛してるんだ)

『好き』だけじゃ足りなくて、胸の中でそうつぶやいた時だった。

〇〇「え……?」

手に持っていた白い花が、赤く色を変えていく。

(これは……)

手の中で起きた奇跡はまるで、オレ達の愛情に応えたかのようで……

胸がいっぱいになって、息が詰まった。

(真実の愛……)

(オレさえ望めば、こんな近くになったんだ)

〇〇は、ずっとオレに愛を注いでくれていたのに……

それでも目の前の奇跡が夢みたいで、まだふわふわとした心地だった。

ヴァイリー「オレ達の愛が、真実の愛だって証……だと、思いたい」

彼女の細い手にある花を、そっとオレのものと取り換える。

ヴァイリー「この花を……オレ達の愛を、二人でずっと大切にしよう」

〇〇「はい……!」

ヴァイリー「〇〇がくれた愛を力に変えて、オレはこの国を立派な国にする。 だから……〇〇。これからもずっと、オレの隣にいてくれないか」

〇〇「もちろんです。ヴァイリーさんとこの国を……傍で見守らせてください」

愛を誓うオレ達の手の中で、一層赤く染まった花は、それからいつまでも甘い香りを漂わせ続けた…-。

……

交流会には、さまざまな国からたくさんの人が集まってくれた。

(よし、どこも順調だな)

挨拶やねぎらいの言葉をかけながら会場を回っていると、〇〇が近寄ってくる。

〇〇「ヴァイリーさん、お疲れ様です。大盛況ですね!」

ヴァイリー「ああ、皆ぎりぎりまで手を抜かずに準備してたからな……オマエも、ありがとう」

〇〇「え……」

礼を言うと、何のことかわからないというふうに彼女が首を傾げる。

ヴァイリー「職人達に声をかけて回ってただろう? 専門的な話もちゃんと聞いてて……きっと皆喜んでる」

〇〇「み、見てたんですか?」

恥ずかしそうに頬を染める彼女に、はっとする。

(そりゃ……オマエのこと、自然と目で追っちまうし)

そんなことは言えなくて、思わず顔が熱くなる。

〇〇「でも、実は私もヴァイリーさんを見ていたんです」

ヴァイリー「え……?」

〇〇「……つい目で追っちゃって」

はにかむように笑う表情に目を奪われて、一瞬息が止まりそうになる。

ヴァイリー「あ……ありがとな」

(こういうところが……駄目だよな、オレ)

込み上げた喜びに浸りながらも、オレはなんだかばつの悪い思いを抱えていた…-。

……

交流会は盛況に終わり、招待客達との晩餐会が始まる。

この国の代表として皆の前に立つと、自然と背筋が伸びた。

(〇〇……)

少し後ろで見守っていてくれる彼女を想って、オレは軽く目をつむる。

(見ていてくれ)

ヴァイリー「今晩は、集まってくれてありがとう。この交流会が皆にとって意義のあるものになったと信じてる。 俺はこの国を、もっと開かれた国にしたいんだ。 獣人であることを誇り、他の種族とも積極的な交流を持とう。 オレ達の力は、世界に役立てていけるはずだ!」

獣人の職人達、その技術を存分に買ってくれた招待客達……誰もが深く頷いている。

(前だったら、こんなことやろうなんて絶対に思わなかった)

(〇〇……オマエと出会えたから、オレは…-)

どこからともなく鳴り始めた拍手は、やがて会場全体を震わせるほどの大きさへと変わっていった。

振り向けば、優しくも力強い笑みを浮かべた彼女の姿があった。

(〇〇と出会えて、幸せだ)

懐に忍ばせた愛の証の赤い花に手を添えて、オレは誇らしさに胸を張った…-。

おわり。

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