太陽最終話 願いを込めて

色を濃くしていく夕焼けが、夜の訪れを待っている…-。

私は中庭を歩きながら、庭の木々が茜色に染められていく景色をしばらく眺めていた。

(この景色を見られるのも、今日まで……)

明日、私はこの城を発つことになっている。

(フレイヤさんときちんと話せてよかった。寂しいけど、次も仲良くできるといいな)

そんなことを考えながら、夕暮れの風の心地よさを楽しんでいると……

ジーク「ここにいらしたんですね、プリンセス」

〇〇「ジークさん」

穏やかな笑みを湛え、ジークさんが私の向かいに立つ。

ジーク「プリンセス……あなたに改めてお伝えしたいことがあるのです」

〇〇「伝えたいこと……ですか?」

ジーク「宝飾展でお話しした宝石のことを、覚えていますか?」

私はひときわ輝く特別な宝石を思い出す…-。

〇〇「『乙女への誓い』ですか?」

ジーク「ええ」

ジークさんは嬉しそうに笑みを浮かべると、小さく頷いた。

ジーク「あの時は言いそびれてしまいましたが……。 改めて、あなたにお伝えさせてください」

不意に、彼の柔らかい表情が凛としたものへと変わる。

ジーク「私はいずれ、あの宝石……『乙女への誓い』をあなたに捧げたい。 私が生涯お守りすると決めた、あなたに……」

私は宝飾展での彼の言葉を思い出す…-。

―――――

ジーク『これが『乙女への誓い』と呼ばれる宝石で、メジスティアの王族が代々受け継いできた宝石です。 王となった者が、永遠の愛を誓う相手に捧げる宝石……愛の守護石とも言われています』

―――――

(それって……)

永遠の愛を誓う相手に捧げるという宝石を渡される、その意味を考えるだけで頬が熱を持っていく。

〇〇「……嬉しいです。 私は……ジークさん以外の人との未来なんて、考えてもいませんでした。 会えない時間も、気がつくとジークさんのことを考えてしまって……」

ジーク「……」

ジークさんは、黙ったまま私を見つめている。

愛おしげなその眼差しがなんだか気恥ずかしくてうつむくと、彼の手が私を抱き寄せた。

〇〇「……!」

髪にキスを落とし、ジークさんが囁く。

ジーク「私もです。 あなたに会っていない時も、気がつくとあなたのことばかり考えています。 あなたが私と同じ気持ちでいてくださったこと……夢のようです」

(ジークさん……)

ジーク「私だけのプリンセス……。 ……王として騎士として一人前になったその時は、受け取っていただけますか? 永遠の愛を誓う相手に捧げるあの宝石を……そして、私のこの想いを」

〇〇「……はい。待っています」

(その時は私も、あなたに永遠の愛を誓いたい)

腕を離し、ジークさんが胸元から小さな箱を取り出した。

箱を開けると、紫色の宝石が夕陽を受けてきらきらと煌めく。

(綺麗……)

ジーク「『乙女への誓い』をお渡しできるその日まで……これを持っていていただけますか? 離れている間、あなたに怪我がないように……願いを込めたお守りです」

〇〇「こんな素敵なものを、いつ……」

ジーク「実はこの間街に行った時に、あなたに内緒で用意しました」

(あの時……)

―――――

ジーク『……! プリンセス、おはようございます。 これから街に用事がありますので、何かありましたら使用人にお申しつけください』

―――――

ジークさんは、私の手のひらにそっと宝石を置く。

ジーク「たとえ離れていても、私はいつでもあなたの傍におります」

紫色に輝く宝石は、ジークさんの瞳の色に似ていて…-。

(なんだか、すごく落ち着く……)

〇〇「はい。大切にします」

ジークさんは優しい微笑みで私の髪を撫でる。

彼の穏やかで大きな愛に包まれ、嬉しくて思わず涙が溢れそうになる。

ジーク「プリンセス?」

〇〇「ごめんなさい、嬉しくて……」

慌てて涙をぬぐおうとすると、彼の細長い指が優しく目じりをぬぐってくれた。

ジーク「……愛しています」

愛の言葉と共に、唇にそっと優しいキスが落とされて……

(私も、あなたのことを……)

沈みゆく夕陽が、私達を優しく包み込む。

彼の腕の中で、私は何度も深い愛を感じていた…-。

おわり。

<<太陽7話||太陽SS>>