第3話 黒糖のおまんじゅう

おまんじゅうの店の前まで来ると、私達は買い求める客の列に並んだ。

シュニー「こんなに並ぶなんて、やはりおまんじゅうは美味しいお菓子ってことだね」

○○「そうですね」

シュニー「でもこれじゃ、なくなっちゃうかもしれない……」

シュニー君は今か今かと前に並ぶ客達を眺める。

(シュニー君、早く食べたいんだ……可愛いな……)

私は口に手を当てて、笑いを隠す。

○○「そんなに心配しなくても、おまんじゅうはこの人数でもなくならないと思いますよ?」

シュニー君の頭をなでると、手を掴まれた。

(え……?)

私が見上げると、シュニー君は不機嫌そうに目を細めた。

その頬が少し膨らんでいるように見える。

シュニー「今、子ども扱いしたな?」

○○「それは……」

笑ってなんとかこの場をごまかそうとしたけど…―。

シュニー君は、さらに瞳を細めた。

シュニー「下僕の考えることなんてお見通しなんだからね」

小さな手が私の顎を掴みあげた。

○○「っ……」

シュニー「僕を子ども扱いするなんて、いい度胸だね」

勝ち気な赤い瞳が、私を射抜く。

その視線を浴びて、思わず頬が熱くなった。

(なんだろう……これ)

胸がトクトクと音を立て、私はシュニー君の瞳をただ見つめることしかできない。

シュニー「あ、列が進んだ! 行くぞ」

不意に顎から手が離れ、私はほっと息を吐いた。

(突然だったから……びっくりした……)

鳴りやまない胸の鼓動を聞きながら、私はシュニー君の後を追った。

……

ようやく買うことが出来て、私達は手もとの温かいおまんじゅうを見つめた。

おまんじゅうから、温かな湯気が立ち上る。

シュニー「僕が知っているおまんじゅうよりも黒いな」

○○「たぶん、黒糖を使っているんだと思いますよ?」

シュニー「黒糖?」

シュニー君は不思議そうな顔で私を見上げる。

(そうか、シュニー君は黒糖を知らないんだ)

○○「黒いお砂糖です。サトウキビを煮詰めたのかな……独特の甘みがあって美味しいんですよ」

シュニー「へぇ……お前、中々物知りだな!」

○○「はい、これは元いた世界で食べたことがあったので」

シュニー「さすがは僕の下僕だね!」

シュニー君は笑顔になって、私の頭を撫でる。

その時…―。

??「おい、まだかよ! いつまで待たせる気だ!?」

列の後ろから怒鳴り声が聞こえた。

(え……?)

2人の男性が列をはみ出し、前の客を押しのけ強引に前へやってくる。

横暴な客1「どけよ!」

気がついた時には、男性に押し飛ばされ私はよろめいた。

○○「っ……!」

おまんじゅうが手から落ち、地面に転がる。

○○「あ、おまんじゅうが……!」

慌てて私は手を伸ばした。

けれどおまんじゅうは、男性に無残にも踏みつぶされてしまった。

○○「あ……! 皆ちゃんと並んでいるのに……ルールは守って下さい」

横暴な客1「なんだぁ?」

思わず男性に言ってしまった後で、私は慌てて口を手で押さえた。

けれど、今さら止めようもなく、男性が私を睨む。

○○「……せっかくのお祭りなんです」

横暴な客2「うるせぇ!」

男性が振り上げた手を見て、私はとっさに腕で顔をかばう。

けれどその時、腕を掴まれ横に勢いよく引っ張られた。

○○「っ……!」

私の目の前に、白いふわふわした髪が踊り出る。

○○「シュニー君……? シュニー君、危ないよ……!」

シュニー「危ない? 誰に向かって言っているの? いいから僕の後ろにいること! いいね!?」

○○「うん……」

横暴な客2「なんだ? このガキ!」

シュニー「こんな所で騒いで、どっちがガキ?」

横暴な客1「なっ……! 生意気なガキだな!」

シュニー君が、怒りをあらわにした男性達を前に身構える。

小さな背中が、とても頼もしく見えた…―。

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