第2話 王太后様との謁見

城に着くと、私はセラスさんと共に謁見の間へと案内された。

広い室内の両側には、家臣の方達が物々しい空気をまとい控えている。

(これはいったい……?)

空席の玉座を前にして、私は恐縮しながらセラスさんの隣に並んだ。

セラス「かしこまっててごめんな。どうしても会いたい言うて聞かへんくて。ちょっとだけ我慢しとって」

〇〇「会いたいって、誰がですか?」

セラス「王太后……オレのばあちゃん」

その時、王太后様が家臣の方達を引き連れて現れ、玉座へゆっくりと腰を下ろした。

張りつめた空気に、思わず背筋が伸びる。

王太后「ようこそおいでくださいました」

セラスさんに似た瞳を細め、王太后様が優しく微笑む。

〇〇「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます」

私がお辞儀をすると、王太后様はゆっくりと首を横に振った。

王太后「礼を言うのは私達の方です。それなのに、わざわざセイトスまで呼びつけるようなことを……」

〇〇「いいえ、そんな…-」

セラス「ほら、ばあちゃん。〇〇も恐縮してる。それくらいにしとき」

私の隣で、セラスさんが困ったような笑みを浮かべる。

セラス「まぁ、アンタにはそんぐらい感謝してもしきれへんってことや。 マグナがこの国にやって来た頃、ここも意見が割れて、随分揉めたらしくてな。 王政も上手く回らん、国もまとめられへん……おまけにここの王子もどっか行ったきり行方不明。 ほんまに最悪な状況や」

窓の外を眺めるセラスさんの瞳に、後悔がにじんでいるような気がした。

セラス「一番ひどかった時におらんくて……堪忍な」

王太后「この国の礎がふがいないばかりに、ずいぶん民には苦労をかけてしまいました」

セラス「ミネルヴァにもな……」

王太后「ですから、民を良き方へと導いてくれたあなたに、お礼を言わせてください」

(王太后様……)

私は自分の気持ちを落ち着かせるようにゆっくりと息を吐いた。

〇〇「お力になれたのなら、よかったです。 それに、王太后様がご無事で、こうしてお会いできて嬉しいです」

不意に、私の頭の上に大きな手が乗せられる。

セラス「アンタ、ほんまにええ子やね」

セラスさんが私の頭を撫でながら、優しく微笑んだ。

その笑顔は、今まで見せていたどの表情よりも優しくて……

胸がわずかに甘く疼くのを感じた。

……

謁見の間を退室した後、セラスさんが私を部屋へと案内してくれる。

セラス「来たばっかで疲れたやろ? 今日はゆっくり過ごしてや」

セラスさんは歩き出しつつ、私に大きく手を振る。

彼の態度が不自然に明るく見えて、私は……

〇〇「どこに行くんですか?」

思わずセラスさんの背中に尋ねていた。

セラス「どこって、オレの部屋」

セラスさんの表情に、わずかに戸惑いの色が浮かんだように思えて……

〇〇「私も行きます」

セラス「行くって、随分積極的やね。一緒に来て何するん?」

見つめ続ける私に折れたのか、セラスさんは深く息を吐き出す。

セラス「アンタ、聡いなあ」

(やっぱり何かあるんだ)

セラス「街の復興作業が続いとうな。中心の道の整備が急務で、その作業に行くつもりや」

〇〇「なら、私もお手伝いを…-」

すると、セラスさんは眉根を寄せ、困ったように微笑んだ。

セラス「アンタに言うたら、そうなるってわかっとったのに。 失敗や」

ため息交じりに、セラスさんは少し悔しそうにつぶやいた。

城を出て、私達はまた街へ向かう。

セラス「そこ、まだもろくなっとうから気ぃつけ」

〇〇「はい」

セラスさんの後ろを歩きながら、私は注意深く足元を見つめる。

セラス「電気が溜まりに溜まって、分子の繋がりがおかしくなってるんやろな。 一度おかしなったもんは、直るのに時間がかかる……」

ひび割れた地面を見つめ、ふとこの国が元通りになるまでの時間を考える。

セラス「ま、そう難しいこと言うても、足元悪いのは変わらんけどな」

(不思議だな。セラスさんが言うと、重くなりそうな気持ちが軽くなる)

(話し方のせい? そういえば……)

ふと、言葉の端々に出る独特の訛りが気になって……

セラスさんはくるりと振り向くと、私の顔を覗き込む。

セラス「なんで、オレだけこんなしゃべり方してんのかって?」

〇〇「え……?」

その眼差しが、まるで考えていることをお見通しかのように、私をまっすぐに射抜いた。

セラス「知りたい? どうしても?」

畳みかけられるように尋ねられ、私はつい頷いていた…-。

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