第3話 カノエのチームメイト

会場の光景を見て、私は思わず息を呑んだ。

(すごい……!)

辺りの壁は金屏風に囲まれたかのように美しい金色をしていて、そこに描かれた猛々しい虎と龍は、今にも動き出しそうなほど迫力があった。

〇〇「前の会場とは、随分と雰囲気が違います……!」

私が声を弾ませると、カノエさんも嬉しそうに目を細める。

カノエ「四季の国や自分達の文化を重んじようとしていることは、素晴らしいしありがたい。 俺達もこよみの国の王子として、クライヴァーという文化を理解し尊重できればと思っている」

〇〇「カノエさん……」

まっすぐに言う彼に、私は…―。

〇〇「カノエさんらしいですね」

カノエ「……堅苦しいか?」

〇〇「いえ……」

彼はわずかに目尻を下げるけれど、すぐに凛々しい顔に戻った。

カノエ「さて。それじゃあ、さっそく練習をするか」

その言葉と同時に、後ろから楽しげな声が聞こえてくる。

そこにはカノエさんが率いる舞のチームに所属する男性達がいて、辺りは途端に賑やかになった。

カノエ「お前ら、少しは黙っていられないのか。今からもう一度ルールを説明するから、きちんと覚えろよ」

チームメイト達「はい!」

カノエさんの一喝で、ぴたりと騒ぎが収まる。

(……変わってないな)

その様子を微笑ましく見ていると、カノエさんが少し不安そうに私の顔を覗き込んだ。

カノエ「うるさくてすまない」

〇〇「いえ、私は楽しいです」

カノエ「ありがとう。お前なら、そう言ってくれると思った。 だが、こいつらを甘やかす必要はないからな?」

チームメイト達「えぇ~!」

冗談めかすカノエさんに、チームメイト達は不満そうに声を上げたけれど、やがてカノエさんは場を仕切り直すように大きく手を叩き、クライヴァーの説明を始めた。

カノエ「早速だがゲームの説明をする。クライヴァーはチェスに似ている、一チーム16人で行う競技だ。 マスを移動し、相手の王を取ったら勝利。そうだったな、○○」

〇〇「はい。皆さんには、ゲームの前にそれぞれの役職の駒が与えられます」

カノエ「役職は、王、女王、そして騎士、僧侶、戦車、兵士と分かれている。 同じマスに入ると戦闘となり、相手の武器を破壊すると勝利だ」

その時、真剣に話を聞いていたチームメイトの一人が、さっと手を上げる。

チームメイト1「痛みも、怪我もすることがないと聞いてますが……本当ですか?」

カノエ「ああ。ここはダンテの魔法科学技術で作られた仮想空間だからな。 そして、ここなら『異能力』も使える」

チームメイト2「異能力って、瞬間移動とかの特別な力のことですよね?」

カノエ「そうだな。他にも戦闘能力強化や体力回復などもあるが、どの力を授かるかは運次第だ。 わかったか?」

チームメイト2「はい、大丈夫です!……多分」

こよみの国にはクライヴァーが普及しておらず、自国ではボードゲームや屋外での練習が主だったらしい。

初めて仮想空間で練習をする彼らは少し戸惑っているようだった。

カノエ「まあ、後は練習をしながら説明していく。それで覚えていけばいい。 俺達みたいなのは……習うより慣れろ、だ」

カノエさんの言葉にチームメイトの皆が苦笑いする。

けれどそれぞれ気合が入ったようで、役割や武器の確認をし始める。

カノエ「単純な奴らだ」

どこか誇らしげに笑った後、カノエさんが今度は私を見て口を開いた。

カノエ「俺は騎士をやろうと思っている。○○はどうする?」

〇〇「私は……」

仮想空間では筋力なども平等になるため、女性でも前線で戦うことができる。

しばらく考えた後、私はカノエさんを見つめ返した。

〇〇「あの……私も、騎士をやろうかなと思います」

カノエ「騎士……!?」

カノエさんは驚いたように目を見開く。

(おかしかったかな?)

(カノエさんの隣に立って戦えたら、と思ったんだけど……)

カノエさんの反応に戸惑いながら、私は視線を彷徨わせた…―。

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