第5話 喜ばせたくて

グレイシア「まだ……俺にできること、あるかもしれないよな。 探してみたい」

しっかりとした声色が、私の心を震わせる…―。

白銀の世界に宵闇が迫る中、グレイシア君と次に向かったのは……

○○「わあ……すごく綺麗」

街の人にイルミネーションが綺麗だと教えてもらった広場だった。

暖かな光でライトアップされたビルを背景に、木々が淡く輝く電飾をまとっている。

(本当にクリスマスみたい……)

素敵な光景に、しばらく目を奪われていると……

グレイシア「……」

○○「どうかしましたか?」

ふと視線を感じ、彼の方を振り返る。

グレイシア「……別に」

けれどグレイシア君はすぐにそっぽを向いてしまった。

そして……

グレイシア「……お前、こういうのが好きなのか?」

○○「え……はい。綺麗だなって思って」

グレイシア「……」

突然彼の視線が戻ってきて、とくんと鼓動が跳ねた。

しかめっ面をして、グレイシア君がじっと私を見つめる。

グレイシア「なら……」

グレイシア君の視線が、今度は光り輝く木々に向けられる。

その瞬間、しなやかな指先を伸ばして手をかざしたかと思えば…―。

○○「……!」

グレイシア君の指先から光の粒が弾け、無数の氷の結晶が宙を舞う。

木々に降る氷のシャワーは、電飾の光を反射し美しく煌めいていた。

(なんて綺麗なんだろう……)

あまりに荘厳で幻想的な光景に言葉を失う。

グレイシア「……!」

グレイシア君と視線が絡む。

不安そうに揺れる深紅の瞳が、私の言葉を待っているようで……

○○「ありがとうございます、グレイシア君……すごく綺麗ですね」

グレイシア「……こんなの、別にたいしたことじゃない」

そっけない声色なのに、口元はどこか嬉しそうに弧を描いていた。

グレイシア「その……お前が喜んでくれたなら、よかった」

(グレイシア君……)

なんだか私まで気恥ずかしくなり、頬が熱を帯び始める。

そんな時…―。

街の人1「素晴らしい……!」

街の人2「ええ、とても綺麗……」

イルミネーションを楽しんでいた人達が、グレイシア君の作り出した光景に感嘆の息を漏らした。

街の人1「是非、このまま残しておいていただけませんか!? せめて今夜だけでも……!」

グレイシア「ああ。それは別に構わないけど」

街の人達「ありがとうございます!」

グレイシア「なら、もうちょっと手を入れておくか……」

そう言ってグレイシア君は、周囲の木々にも同じ魔法をかけ始める。

○○「グレイシア君。ありがとうございます」

グレイシア「別に俺は……」

グレイシア君は、照れた様子で、自分の髪にそっと触れた。

グレイシア「本当は……お前のためだったんだけどな」

○○「え……?」

それは、聞き漏らしてしまいそうなほどに小さなつぶやきだった。

(グレイシア君……)

するとグレイシア君は、ゆっくりと私に向き直り目を合わせた。

グレイシア「お前のこと……喜ばせたかったんだよ」

恥ずかしげに揺れる赤い瞳が、私を捉える。

○○「私を……?」

グレイシア「何度も言わせんな! ……結局、お前にちゃんとした礼もできてないし」

○○「グレイシア君……」

(……嬉しい)

グレイシア「だから明日。予定、空けとけよ」

宵闇に、グレイシア君が灯した光が煌めいている。

その輝きが、これから訪れる特別な時間を私に予感させた…―。

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