第4話 美食探しの旅へ!

優しくそよぐ風に吹かれ、桜の花びらがはらはらと舞い落ちる。

その光景を背に、ネペンテスさんは哀愁を漂わせていて……

ネペンテス「あのお膳は……どの料理もあまりに大味でした。 繊細で深みのある食材の味を活かしきれていないのです」

彼の言葉に、私は目から鱗がおちたような感覚を覚える。

(同じものを食べたのに……こんなに感じ方が違うんだ)

『花の膳』について美食家ならではの意見に感服していると、ネペンテスさんは切なげな表情を浮かべて、散っていく桜の花びらを見つめた。

ネペンテス「まして、あのお膳に飾られていたのは花。そして私は花の精の国の一族。 どうせ命を賭すなら、誰だって美味しくいただかれたいでしょう? あんな最期は悲しすぎます」

(そう……だよね)

彼の横顔に花の一族としての覚悟や矜時を感じて、私まで切なさが込み上げてくる。

すると……

ネペンテス「そこで、〇〇様。お願いがあるのです。 私の美食の唯一の理解者でさる、あなた様にしか頼めないことです。聞いていただけますか?」

必死なその眼差しに、不思議と胸が熱くなる。

気づけば私は、しっかりと頷いてしまっていたのだった…-。

……

それから……私達は食材を求め、ヴィルヘルムの外れの林にやってきていた。

意気揚々と足を進めるネペンテスさんが、大仰に私を振り返る。

ネペンテス「見てください。こんなところに縞模様のキノコが!」

彼は先ほどからこの調子で、目についたものをひたすらに集めていた。

(ネペンテスさん、張り切ってるな……)

私は苦笑しつつも、少し前のやり取りを思い出していた。

―――――

ネペンテス『私の空腹は、あの『花の膳』では満たされませんでした……。 二人で力を合わせ、あれを超える、私達だけの『花の膳』を食しましょう!』

――――――

(あの時は賛成したけど……)

ネペンテスさんが熱心に集めているものは、どれも毒々しい虫や見たこともない形の蔦などだった。

(このままじゃ二人揃ってお腹を壊しちゃうかも)

なんとかその事態を避けるために、私はあれこれと思考を巡らせる。

〇〇「ネペンテスさん。五感で楽しむ花の膳、というのはどうですか? 味はもちろん、色や香り、食感にもこだわった食材を集めるんです」

ネペンテスさんにそう提案すると、切れ長の瞳がきらりと光って…-。

ネペンテス「それはいいですね! 独創的かつ繊細なお膳ができそうです。 さすが〇〇様。ご自身が最高の食材でいらっしゃるだけある!」

その言葉に、私は……

(……喜んでいいのかな?)

どう反応していいかわからず、思わず言葉を飲み込んでしまう。

ネペンテスさんはそんな私を気にする素振りを見せず、不敵な笑みを浮かべた。

ネペンテス「相変わらず謙虚なお方ですね。しかし、私はわかっていますよ。 さあついて来てください。私にいい考えがあります!」

ネペンテスさんは高らかにそう宣言すると、再び足取り軽く歩き出した。

(……ネペンテスさんの満足いく食材が見つかるといいな)

きらきらと表情を輝かせる彼がまぶしくて、私はそっと目を細めたのだった…-。

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