第1話 出店での再会

文壇の国・ヴィルヘルム 陽の月…-。

この国で催される桜の宴、『観桜会(かんおうかい)』に招待された私は、暖かな日差しに包まれるこの地を訪れていた。

(賑やかで楽しそう。それに桜もとっても綺麗)

街には人々が溢れ、たくさんの出店が軒を連ねている。

そこには他の国では見られないような、変わったものを売る店もあった。

(これ、なんだろう?)

中でもひときわ目を引く極彩色の食べ物に、足を引き寄せられてしまう。

すると……

(あれ、この香りって……)

〇〇「……ネペンテスさん?」

覚えのある甘い蜜のような香りに顔を上げると、花の精の国・ヴィラスティンの王子ネペンテスさんが……

ネペンテス「おっと、これは実に活きのいい食材で……」

出店の前で何かを食べているところだった。

(あれ、なんだろう……?)

その口元からは、何やら植物の根のようなものが覗いている。

(動いてる……!?)

けれど確かめる間もなく、ネペンテスさんはそれを一気飲みにしてしまう。

そして……笑みを浮かべて私に向き直った。

ネペンテス「大変失礼しました。食事中だったもので」

(何を食べていたのかは聞かないことにしよう……)

背中に冷たいものが流れるのを感じつつも会釈を返すと、ネペンテスさんがうっとりと目を細め、距離を詰めてきた。

ネペンテス「あなた様もいらしていたんですね。ああ、相変わらずかぐわしく美味しそうな方だ……。 よろしければ、ご一緒しませんか?」

舌舐めずりをしながらも恭しく手を差し出され、思わず苦笑いしてしまう。

(ちょっと怖いけど……断れない)

私は彼の放つ芳香に引き寄せられるままに、その手を取ったのだった…-。

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