第3話 いざ、洞窟の中へ

午後になり、城を出た私とロルフ君は、たどり着いた洞窟の前で、息を飲んだ。

〇〇「ここ……かな?」

奥が暗く見えない洞窟は、私達が迷い込むのを今か今かと待っているように見える。

ロルフ「お化けが出たら……」

ロルフ君の声が、消え入りそうなほど震えている。

〇〇「てっ……手を繋いでいけば大丈夫だよ」

なんとか明るい声でロルフ君に手を差し出すと、

ロルフ「はい……!」

彼は、しがみ付くように私の手を握りしめた。

その手を握り返し、洞窟へと足を踏み出した。

ロルフ「……絶対、手を離さないで……」

ランプの明かりだけを頼りに、私とロルフ君は進んでいく。

身を寄せ合う私達の足元に、時折、天井から水滴が落ちてくる。

ロルフ「ひっ……」

その音が響くたびに、ロルフ君が体を震わせる。

ロルフ「ひゃっ! 冷たいっ……!」

ピチャンッという水滴の音に響き、ロルフ君の体が壁にぶつかった。

〇〇「ロルフ君、大丈夫……?」

慌てて駆け寄ろうとしたその時……

ロルフ「うわ……!」

壁だと思った場所が盛り上がり、無数の影がいっせいに飛び出していく。

〇〇「っ……!」

ロルフ「コッ……コウモリ……!」

〇〇「ロルフ君、危ない!」

ロルフ君が必死にコウモリの群れを振り払おうとした、その瞬間…-。

足元を滑らせて転んでしまった。

ロルフ「あっ……!」

〇〇「大丈夫?」

ロルフ「痛い……」

ロルフ君はせきを切ったように泣き出してしまう。

〇〇「ロルフ君……」

ロルフ「お父さまは……きっと僕のことが嫌いなんです……。 だからこんなっ……試練なんて……」

〇〇「そんなことないよ」

ロルフ「ならどうしてこんな……」

〇〇「国王様は、ロルフ君ならできると思ったから言ったんだよ」

ロルフ「そうでしょうか……」

〇〇「そうだよ。 私も怖いけど、ロルフ君ならできると思ったから一緒に来たんだよ」

顔を覗き込むと、ロルフ君の澄んだ瞳が私を映した。

その瞳に、私は強く頷いてみせる。

〇〇「大丈夫、できるよ」

ロルフ君の瞳が、キラキラと輝いた。

ロルフ「ボクが……できる、かな……?」

〇〇「うん」

ロルフ「……」

ロルフ君は自分の手のひらを見つめ、ぎゅっと握りしめた。

〇〇「この先もがんばろうね」

ロルフ「はい……!」

力強い声で頷くと、ロルフ君は目に浮かぶ涙を拭い、私の手を引いた。

けれど、やはりその手は少し震えているようだった。

〇〇「ロルフ君、大丈夫?」

ロルフ「だっ…だいじょうぶです……。 ボクだってこれくらい」

(がんばって、ロルフ君……)

ぎゅっと手を握り返すと、ロルフ君が微かに笑ってくれた。

けれど……

ロルフ「そんな……」

奥へ行き当たった私達の前には、大きな岩の壁が立ちはだかっていた。

〇〇「一本道だから迷うはずないんだけど……」

ランプの明かりをかざして、私とロルフ君は必死に壁を探った。

(ここまで来たのに…どうして……?)

何をしてもびくともしない岩の壁に、心が折れそうになる。

けれどその時……

ロルフ「え……?」

〇〇「ロルフ君どうしたの?」

ロルフ「ここだけ……奥に押せるようになっています」

ぐいっとロルフ君が壁の一部を押した。

ガタンッ…-。

ロルフ「え……?」

何かのスイッチのように岩が奥へと沈み込むと、地面が大きく揺れ始める。

〇〇「どうしたの……!?」

私達の足場が、突然傾いたかと思うと、

〇〇「……っ!」

まるで滑り台のように洞窟の奥深くへと滑り落ちていった…-。

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