第2話 彼の弟

レジェと共に廊下を進んでいく。

廊下の窓から漏れ入る、柔らかな陽の光を肌に感じて、少しずつ緊張がほぐれていく…―。

少し進むと、前から男の人が歩いてきた。

(……どこかで、会ったような?)

男の人は私とレジェに気がついて、わずかに頭を下げた。

ブロンドの髪が日差しを浴びて、優しく光って見える。

(そうか、レジェに似てるんだ)

レジェ「紹介するよ、弟のロイ」

(弟さん……目元がそっくり)

○○「はじめまして、○○です」

ロイ「……はじめまして」

レジェ「この方が、僕を眠りから目覚めさせてくれたんだ」

ロイ「……そうですか」

○○「……!?」

一瞬、ロイさんが鋭く私を睨んだ気がした。

(気のせい……?)

レジェ「明日の国議の準備は順調かな?」

レジェさんはその様子には気づかず、柔らかな微笑をロイさんに向ける。

ロイ「兄様のご心配にはおよびません。では、僕はこれで……」

ロイさんは私をレジェに頭を下げると、あっという間に廊下の向こうに消えてしまった。

○○「国議があるんですね」

レジェ「そうなんだ。そこで、国の外交方針について話し合うんだけど」

レジェは、どこか誇らしげに瞳を輝かせる。

レジェ「実は、ロイが初めて議長を務めるんだよ」

○○「では、今とてもお忙しいんですね」

レジェはその返事の代わりに、わずかに肩をすぼめた。

その瞳からは、先ほどの光は消えている。

○○「レジェ……?」

レジェ「いくら国議の準備で気が張っていたとしても……」

○○「そんな大切な時に、ロイさんの集中を私が邪魔してしまっていなければいいのですが……」

レジェ「大丈夫だよ、ロイを気遣ってくれてありがとう」

○○「いつも、ロイさんとはあまりお話しされないんですか?」

レジェ「そうなんだ。どうやら、僕は嫌われてしまっているようで」

○○「嫌われて……?」

レジェ「ああ。どんなに僕が話しかけても、あの通りの態度で。恥ずかしいけど、なぜ嫌われているのか僕にはさっぱり分からないんだ……」

彼は悲しげに長いまつ毛を伏せた。

○○「……大丈夫ですか?」

レジェ「ああ、大丈夫だよ。ごめんね」

彼はそう言って笑ってみせる。

(寂しそうな顔……)

視線を落とすと、レジェの行き場なく彷徨っている手が目に入り…―。

思わずその手を取ってしまった。

レジェ「……○○?」

○○「すみません! ……私、つい」

(私、もしかして大胆なことをしてしまったんじゃ……)

レジェ「どうして謝るの? 気にかけてくれてありがとう」

○○「いえ……そんな」

レジェの言葉に、私はそっと胸を撫でおろした。

レジェ「ごめんね、廊下で立ち話しをさせてしまって」

○○「大丈夫です」

次の瞬間、レジェの手が私の背中にそっと添えられた。

レジェ「部屋はすぐそこだから。さ、行こう」

○○「……は、はい」

背中に触れているレジェの手から、彼の熱が伝わってくる。

(大きな手……)

ほろほろと窓から入る陽の光が、より一層私の体に熱を与えた…―。

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