第4話 大きな手のひら

レイスさんの支度が整って、私達は出かけることにした。

すると……

(……?)

廊下に出た途端、執事さんが真っ青な顔をして駆け寄ってくる。

執事「レイス様! 急ぎお越しください。国王様が…-」

そこまで言って、私の姿に気がついて、執事さんは口をつぐむ。

〇〇「私、お部屋に戻っていますから、行ってください」

ただならぬ事態を察し、私はすぐにそう口にした。

レイス「……すまない」

レイスさんが、足早にその場を去っていく。

……

夕方…-。

(国王様、どうなさったんだろう……心配だな)

太陽がゆっくりと傾いて、世界を黄金色に染めていく中、私は庭のベンチで思いを巡らせていた。

ふと空を仰ぐと……

(木漏れ日……)

城の向こうに見える森の木々の間から、チラチラと陽の光が漏れている。

まぶしさに目を閉じると、まぶたの裏に沈む太陽の金色を感じた。

(レイスさんも、大丈夫かな……)

…と…-。

不意に大きな声がして、目をあける。

??「こんな時にヴァイオリンだと!? レイス、お前が王子だなどと……王家の恥だ!」

(レイスさんのお兄様の声?)

声のする方へ目をやると、城の向こう側でレイスさんがお兄様に肩を掴まれている。

レイスの兄「そうして国民の税を食いつぶしてるだけなら、いっそいない方がいい!」

(そんな……!)

あまりの言葉に、私はベンチから立ち上がってしまう。

お兄様の肩越しに、レイスさんと目が合った。

(レイスさん……)

レイスさんは、私に向かってにっこりと笑って見せる。

それに気がついて、お兄様がこちらを振り向き、きまり悪そうにその場を去っていった。

レイス「……驚いた?」

レイスさんは、こちらへゆっくりと歩いてくる。

レイス「父さんが倒れたんだ。こんなこと初めてだから、皆、気が立っちゃって。 ヴァイオリンでも弾いてあげたら、父さんの心が休まるかと思ったんだけど」

〇〇「国王様のお具合は……」

レイス「大丈夫。医師もついてるし、今は落ち着いてる」

〇〇「よかった……」

レイス「でも、これを期に兄さん達は王位継承争いを始めるんだろうな」

窓ガラス越しに、レイスさんのお兄様が誰かと言い争っているような様子が見える。

レイス「ごめんね、綺麗な季節をゆっくり楽しんでもらおうと思ったのに…-」

私のまぶたの上にレイスさんの大きな手のひらが乗せられて、その光景を覆い隠した…-。

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