第3話 白い日差し

午後の気だるげな太陽が、部屋いっぱいにまったりとした光をさしかけている。

レイスさんは、まぶしいものを見るように、私の髪を目を細めて見つめていた。

(いつまでこのままなんだろう……)

ドキドキと胸が苦しくなって、私は思わず視線を逸らす。

すると、

〇〇「あ……」

レイスさんの部屋が、美しい絵画や彫刻で溢れていることに気がついた。

レイス「気に入った?」

〇〇「すごく綺麗……」

辺りを見回すと、自然と唇から言葉がこぼれ落ちる。

レイスさんは嬉しそうに微笑んだ。

レイス「これ、全部俺の作品なんだ」

〇〇「え!? すごい……!」

レイス「そう? 皆には、お遊びだと思われているけど」

〇〇「そんな! こんなに素敵なのに」

私は、吸い寄せられるように一枚の絵に近づいていく。

白に緑、それから鮮やかなオレンジ色が散りばめられたキャンバス…―。

〇〇「綺麗……これは……?」

レイス「……木漏れ日だよ」

レイスさんはいつの間にか私のすぐ後ろにやってきていた。

彼は、私の後ろから手を伸ばし、愛おしげにキャンバスの白地に触れる。

レイス「夕暮れ時に寝そべってたら、木漏れ日があんまり綺麗で」

背中がレイスさんの胸に触れて、私の胸が大きく音を立てた。

レイス「今日の夕方に最後の仕上げをしようと思ってたんだ」

振り向くことができずに、私はレイスさんの指先を見つめ続けた。

レイス「今日は日差しが白いな。綺麗に仕上げられそうだ」

(日差しが、白い……?)

もう一度、きちんとキャンバス全体を見ると……

(ほんとだ)

キャンバスの白い部分が、木々の葉を透かす木漏れ日の光に見えてくる。

(レイスさんの目に映る世界は、なんて綺麗なんだろう……)

彼がすぐ後ろにいることも忘れ、私はただ、そのことに胸を打たれた。

〇〇「もっと、見たいです。レイスさんの作品」

レイス「どうぞ。いくらでもあるよ」

レイスさんは照れくさそうにそう言った。

レイス「俺、時間だけはあるからね。 兄さんたちには子どももいるし、5番目の王子なんて王位も関係ないし、いる意味もない。 俺……役立たずな王子って、思われてるんだ」

〇〇「そんな……」

レイス「まあ、気楽でいいよ。おかげで好きな芸術の中で生きていられるし。 父さんに言わせれば、こんなのは遊びらしい。 いつも、軍事とか外交とか、国の役に立つことしろって怒られる」

(そうかな……軍事や外交だけじゃなくて、芸術だって大切だと思うけど……)

後ろにいるレイスさんを振り返ると、その顔は、少し悲しそうで……

でも、私が見つめていることに気がつくと、彼はすぐに笑顔を作った。

レイス「……着替えてくる」

彼はそう言って、部屋を後にした。

(レイスさん……)

ふと、街で彼が弾いていたヴァイオリンの音色を思い出す。

(皆、とても楽しそうでしたよ……)

私は窓の外の、“白い日差し”を見つめた…-。

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