第2話 クレアブールの王子

旅の途中で襲われた野盗から、偶然にも、ゲイリーさんに助けてもらえた。

そして今も、私がさっきの恐怖から落ち着くようにと、傍にいてくれている。

○○「助けてくれて、本当にありがとうございました」

ゲイリー「いや、礼はいい。俺もおまえに助けられた身だからな」

ふっとゲイリーさんが優しく笑う。

その笑顔に、再会した喜びを改めて感じた。

(また、会えて嬉しいな)

つい先日、ゲイリーさんを目覚めさせたけれど、彼はお礼をひとこと言って、すぐに立ち去ってしまったのだった。

ゲイリー「しかし、なぜこんな森に? ここは危険だ」

○○「クレアブールの王子様にご招待を受けて、首都へ向かう途中だったんです」

ゲイリー「……」

その言葉に、ゲイリーさんは表情を険しくさせたけれど、それ以上は何も言わなかった。

○○「ゲイリーさんも、どうして森の中にいたんですか?」

ゲイリー「ああ、それは……」

○○「ゲイリーさん?」

ゲイリーさんが、困ったように言い淀む。

ゲイリー「俺も今、旅をしている。そうしながら、困っている人々を助けているんだ。 さっき襲ってきた奴等は、国政を良く思わない者達だ。今、クレアブールは荒れている」

○○「そうだったんですね……でも、ゲイリーさんは王子様なのに? てっきりご自分の国に帰られたのかと」

そう言うと、ゲイリーさんが顔をそっと伏せる。

ゲイリー「……いろいろと訳ありでな」

長く濃いまつ毛が憂いを帯びたように震えて、なぜだか胸が締めつけられた。

ゲイリー「それよりも、落ち着いたようだから移動しよう。ここにいればまた危ないことがあるかもしれない。 簡素な場所だが、身を寄せているところがある」

○○「はい、ありがとうございます」

ゲイリーさんが案内してくれた場所は、確かに王子様が身を寄せるにしてはとても簡素な建物だった。

ゲイリー「トロイメアの姫を招待するには、とてもむさ苦しいところだが」

○○「そんなことないです! ありがとうございます」

その後、ゲイリーさんは温かい飲み物を用意してくれて、やっと心から落ち着くことができた。

そんな私を見てゲイリーさんが、ぽつりとつぶやいた。

ゲイリー「またこうして再会できたのも、おまえを助けることができたのも喜ばしいことだが……。 一刻も早くクレアブールからは立ち去った方がいい。悪政によって治安が乱れている」

(ゲイリーさん……)

○○「……わかりました」

小さく頷くと、ゲイリーさんがほっと息を吐いた。

ゲイリー「ああ、そうした方がいい。 クレアブールの王子には俺から連絡を入れておこう。面識があるんだ」

ゲイリーさんの顔色が、少し青いような気がして……

○○「あの、大丈夫……ですか?」

思わず口にしてしまっていた。

ゲイリー「何がだ? 俺は大丈夫だ」

けれど、大丈夫という彼の笑みが儚く見える。

○○「ごめんなさい。上手く言えないんですが……心配で」

ゲイリー「……ありがとう。 おまえは、優しいんだな。 俺は…―」

再度、彼が何か言いかけた時……

部下1「大変です! ゲイリー様!!」

部屋の扉が激しく叩かれた…―。

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