第4話 涙のわけ

紫雨さんと二人、泣き声の主を探していると……

(あの子は……?)

大きな緑の葉に隠れるようにして泣いていたのは、さっきぶつかった女の子だった。

女の子に駆け寄ると、紫雨さんは同じ目線になるように腰を落とす。

紫雨「どうしたの?」

女の子「約束してた子が……来られなくなっちゃったの。 ユメクイが出るから危ないって……パパとママに言われて」

〇〇「……っ」

涙を流す女の子に、なんて言葉をかけたらいいか悩んでいると……

紫雨「……お友達に会えなくて残念だったね。 だから……ユメクイがこの世界からいなくなるように、君は強く願っていて?」

彼は迷いのない声で言うと、小さな頬に伝う涙をそっと指でぬぐった。

紫雨「今は、夢の力が強まる時期……君が願えば、きっと叶うと思うんだ。 そうすればまた、お友達と会えるから」

女の子「……うん。いっぱいお願いする。お兄ちゃん、ありがとう」

彼の言葉は魔法のように女の子の涙を消し去り、笑顔をもたらす。

(紫雨さん……)

希望が満ちた笑顔を前に紫雨さんも微笑み、私まで救われたような気持ちになった。

……

〇〇「……笑顔が見られてよかったですね」

私達は、お母さんと一緒に歩いて行く女の子を二人で見送る。

けれど……

紫雨「うん……」

(紫雨さん……?)

小さな背中を見つめる紫雨さんは、元気がないように見えた。

〇〇「あの……どうしたんですか?」

紫雨「うん……少しね。 ユメクイのせいでここに来られない人は、他にもたくさんいるだろうなって思ったら……」

彼はわずかに顔をうつむかせると、苦しそうに声を絞り出した。

紫雨「でも、だからこそ」

(紫雨さん……?)

手をぎゅっと握り、わずかにうつむかせていた顔を上げる。

紫雨「……嘘つきにならないように、頑張らないといけないね」

女の子の背中を見つめる彼の瞳に、強い光が宿っていく。

〇〇「はい。女の子の思いも受け止めて」

紫雨「そうだね。だから、僕達は…-」

紫雨さんは、そう言いかけて言葉を飲み込む。

(今も辛い思いをしている人がいる。だから、一刻も早く旅を再開した方がいいのかもしれない)

(きっと紫雨さんも、そんなふうに思って…-)

その時、紫雨さんが私をまっすぐに見つめた。

紫雨「……もう少しだけ、ここにいよう」

そう言うと彼は周りに視線を向ける。

紫雨「僕達は、皆の夢の力を分けてもらいに来たんだから」

子ども達に絵本を読み聞かせる文壇の国の人達や、かわいらしい花を配る花の精の国の人達……

皆が人々を笑顔にしようと奮闘している。

紫雨「ここには、皆の希望と笑顔が集まってる。 ……今日は笑って過ごして、それを力に変えていこう」

〇〇「はい……」

紫雨「あの子の笑顔を見て、思ったんだ。笑顔って広がるんだって。 あの子を力づけようと思ったのに、気づけば僕が笑顔になってた」

その笑顔の中に、彼の秘めた強さを感じた。

紫雨「だから、君も……。 君の笑顔は、きっと世界をきらきらと照らしてくれる……明るくしてくれる。そう思うから……」

〇〇「……!」

紫雨さんは、少し照れくさそうに視線を泳がせる。

その姿がとても愛おしくて、思わず笑みがこぼれたのだった…-。

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