第6話 許されないと知りながら

桜花さんに手当てをしてもらった傷口が、熱を帯びる…―。

桜花「包帯、きつくないですか?」

○○「はい……大丈夫です。桜花さんの方こそ、体調は大丈夫ですか?」

桜花「あなたは優しい人ですね。自分の怪我より私を心配してくださるなんて」

○○「そんなことないです……」

桜花「あなたはご自分のことを、わかっていらっしゃらない」

窓の外から、温かい陽射しが差し込んでくる。

桜花「庭へ行きませんか?こんな日は花に集まる蝶が美しいのです」

様子を静かに見守ってくれていた従者の方が、口を開く。

従者「桜花様……」

桜花「……すぐに戻る」

○○「桜花さん……無理しないでください」

桜花「私は大丈夫です。あなたのお怪我が大丈夫でしたら、ですが」

桜花さんが、困ったように笑う。

○○「……私は、大丈夫です」

桜花「そうですか。よかった」

桜花さんは私の肩を抱えて、立たせてくれる。

その瞬間、桜花さんの顔が近づいて…―。

(やっぱり、綺麗な顔……でも)

(どうしてだろう……すごく、儚げに思えて)

胸が苦しくなって、桜花さんの顔を見つめてしまう。

桜花「どうかされましたか?」

○○「……いえ、何でもありません」

(何だろう……この気持ち)

庭に降り注ぐ太陽の光が、私達を優しく包み込む…―。

桜花「あの大きな木の下で休みましょう」

中庭の中央に生えている大きな木の下で、私達はのんびりとした時間を過ごす。

(桜花さんの言った通り、蝶が綺麗……)

色鮮やかな蝶たちが、花の上をひらりと舞い、見ているだけで、とても穏やかな気持ちになった。

桜花「どうしても、あなたとここでお話がしたかった」

不意に、桜花さんが口を開いた。

桜花「花は、いずれ枯れるとわかっていても美しく咲き誇る。 蝶は、その蜜を吸い、お礼に花粉を運ぶ。そうやって儚い生を繋いでいく……」

静かに差し出された桜花さんのしなやかな指に、一匹の蝶が静かに留まる。

桜花「私も……花のように、咲かせたいと、思ったのです」

○○「桜花さん……?」

(何の話をしているの?)

不思議そうな私に気づき、彼は安心させるように微笑んだ。

でも、その笑顔はやっぱり儚げで…―。

桜花「○○さん……」

指先から離れた蝶が、音もなく飛んでゆく。

気がつくと、桜花さんの指先は私の頬に触れていた。

○○「……っ!」

思わず目を伏せてしまう。

(心臓が、うるさい……)

桜花「私は、そんなあなたが……」

囁きとともに、美しい顔が近づいてくる。

(桜花さん……っ)

ぎゅっと目を閉じた時…―。

肩に、重みを感じた。

○○「……桜花さんっ!!」

桜花さんは私の方に力なくもたれかかり、青白い顔で息を荒げていた。

○○「す、すぐに人を呼んできます!」

静かに桜花さんを横たえて、立ち上がろうとした時だった。

○○「……!」

桜花「行かないで……ください…」

背後から抱きしめられ、耳元で囁かれる。

桜花さんの鼓動が背中を伝って直接響いてくる。

桜花「初めてお会いした時から……私は……いけないことだと、知りながらも……」

私を抱く手に、力がこもる。

苦しげにそう言った途端、桜花さんの体からゆっくりと力が抜けていく。

○○「……桜花さん?桜花さん…っ!!」

私の叫び声が、城中に響き渡っていた…―。

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