第4話 まっすぐな言葉

(オリオンさんから逃げてきちゃった)

口元から昇って行く水泡を眺めていると、国中を覆う、とてつもなく大きなシャボン玉のようなものに、その泡が吸い込まれていく。

(ここから、どうやったら出られるんだろう……)

貝殻のネックレスを眺めていると、涙が一粒こぼれ落ちた。

オリオン「……泣いてるのか」

(オリオンさん……)

急いで手の中のネックレスをポケットに隠し、後ろから聞こえた気遣わしげな声に、聞こえないふりをする。

オリオン「なぜ、泣く?」

(なぜって……)

〇〇「わからないですか?」

オリオン「言われもしないのに察せるわけがないだろう」

〇〇「突然キスをされたり、気持ちを押し付けられたりして……。 悲しくなってしまって」

つぶやくようにそう言うと、オリオンさんはかすかに眉をひそめる。

オリオン「……。 さっきのキスは、力を与えただけだ……まあ、多少色はつけたが」

〇〇「え?」

オリオン「お前は地上のヒトだろう。毎日こうして力を与えないと、深海で息をすることはできない」

(そうだったんだ……最初だけでいいのかと思ってた)

オリオン「わかっていると思っていたが……それに、言っておいただろう。 抗われると燃えると」

(そういえば……)

(でも、そういう問題じゃないと思うけど)

オリオン「それに、気持ちを押し付けるとはなんだ。 好きな相手に好きと言って、何が悪い。 結婚したい女に迫ることの、どこが悪い」

〇〇「オリオンさん……」

オリオン「心から好きだと思える相手に出逢えるのは、奇跡だろう。 俺は、後悔などしたくない。 どんな事をしても……手に入れる」

〇〇「……っ」

まっすぐな言葉に、私の胸がかすかに音を立てる。

オリオン「行くぞ。母上がお待ちだ」

オリオンさんの大きな手が、差し出される。

その手をそっととると、オリオンさんが満足そうに微笑んだ。

オリオン「素直になったようだな」

(嫌だった、はずなのに)

私はなぜか、その手を拒むことができなかった…―。

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