第3話 信じられなくて

翌朝…―。

メイドさんに手伝ってもらって身支度を整えていると、オリオンさんがやってくる。

オリオン「ふーん」

腕組みして私をしばらく見つめると……

オリオン「……短い」

そう言って、スカートのすそを爪先で示す。

オリオン「婚約者以外の男に足を見せるのは、はしたないことだ」

〇〇「わ、私は婚約者なんかじゃないです!」

オリオン「威勢がいいのは嫌いじゃない。 すぐに衣装を届けさせよう。 ああ、それから……髪も上げたほうがいいな」

オリオンさんは、さも当然というような様子で私の髪を持ち上げ、うなじをあらわにした。

〇〇「……っ」

オリオン「そこのメイド。聞いていたな。俺の婚約者として、恥ずかしくない支度を整えてやれ」

〇〇「私、このままの格好でいいです」

そう強く言うと、オリオンさんは私の顎を指で引き上げる。

オリオン「いい度胸だ」

オリオンさんは、おもむろに左手を壁について私を壁との間に追いつめる。

そうして見せつけるように右手を私のスカートに差し込み……

オリオン「俺は抗われると、燃える方だ」

〇〇「やめて下さい……!」

彼の手を制止させようと手を伸ばすけれど、手首が押さえつけられてしまう。

そんな私を見て、彼はクスクスと笑みをこぼした。

オリオン「冗談だ」

〇〇「……っ」

オリオン「15分後、迎えにくる。 支度をしておけ」

(オリオンさん、ひどい……)

(私の気持ちをこんなに無視して、好きなんて信じられない)

オリオンさんが部屋から出て行くと、私は握りしめたままの貝殻ネックレスを見つめた…―。

15分後…―。

メイドさんにされるままに支度を終えた私を、オリオンさんがじっと見つめる。

オリオン「悪くないな。 俺好みだ」

羽根のようにふんわりと身をつつむドレスの裾が、水の中でキラキラとゆらめいている。

〇〇「そんな言葉……嬉しくないです」

(このネックレスをくれた時は、すごく優しい人って思ったのに)

悲しい気持ちがこみ上げて、私は泣きそうになる。

オリオン「ふん……そうだ、お前が俺の妻になったら。 どんな風にも波にもあてないように、宮殿の奥深くにしまい込もう」

〇〇「……っ」

その言葉に、私は…―。

〇〇「私を好きって……本気なんですか?」

挑むように言葉がこぼれ出てしまって、私は思わず口元をおさえる。

オリオン「本気か……だと? まさか、疑っていたのか。 まあ、お前が戸惑うのも無理はない。急だったからな。 もう一度言ってやろう。 お前が、好きだ。 俺はお前を妻にしたい。 ……もう、疑うな」

(怖いくらい真剣な声……本気なんだ)

どうして良いかわからずに、瞳を瞬かせていると……

〇〇「……っ!」

オリオンさんは、私の唇を突然に奪う。

抗おうと手を伸ばしかけると、その手は強い力に抑えつけられてしまった。

オリオン「逆らうことは……許さない」

(ひどい……私の気持ちはどうでもいいの?)

〇〇「こんなの……好きって言わないですよ」

そうつぶやいて、私は急いでその場を走り去る。

手の中の貝殻のネックレスが、とても冷たく感じられた…―。

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