第5話 張り裂けそうな想い

冷たさを含んだ風が、ざわざわと私達の間を吹きすさぶ…-。

〇〇「ナビ……あなたの名前は……」

彼の戸惑いが、揺れる瞳から痛いほど伝わってくる。

―――――

ホープ『まだ一緒にいたいのなら……決して呼んではいけないよ』

―――――

(名前を呼んではいけないって言ってたけど、どうして……?)

ナビ「姫……」

〇〇「ホープお兄ちゃんはわかるのに、どうしても、あなたの名前だけがわからない……」

ナビ「姫……どうか、それ以上は」

私を制するように、ナビがゆっくりと首を横に振る。

けれど…-。

〇〇「どうして……?」

一度口から漏れてしまった想いは、留めることが難しくて……

〇〇「どうして教えてくれないの? 知りたいのに」

ナビ「姫……」

〇〇「今はこうして傍にいてくれてるけど……本当は、お兄ちゃんはもう…-」

ナビ「姫、それ以上はまだ……すべては旅が終わってから……」

〇〇「この旅が終わったら、ナビはどうなるの……!?」

ナビ「!」

〇〇「嫌だよ、私……だって、やっと会えた…-」

ナビ「〇〇!!」

〇〇「っ……!」

鋭い声が、私の声を喉に張りつかせる。

気づくと、ナビが泣きそうな表情で私を見上げていた。

〇〇「……ごめんなさい」

ナビ「……謝るのは、ぼくの方です。 驚かせてすみません……」

彼が私の方へと歩み寄り、頭を撫でようとしてくれているのかそっと手を伸ばした。

けれど、その手は簡単には届くわけもなくて……

ナビ「……っ」

彼は伸ばした手を降ろし、悲しげに私を見つめた。

ナビ「この手じゃなければ……撫でることができたのに……」

聞き取れないほど微かな声で、ナビが悔いるように言葉を紡ぐ。

ナビ「……ごめんね」

〇〇「ナビ……」

(私……自分の気持ちばかりで……ナビのことを……)

(お兄ちゃんの気持ちを考えてなかった……)

〇〇「あの……」

ナビ「申し訳ありません、姫……しばらく、一人になってもいいでしょうか」

〇〇「……」

ナビ「すぐにまた戻ってきますから」

〇〇「……うん、わかった」

頷くと、ナビがどこかほっとしたように息を吐き出す。

ナビ「すみません……」

ナビが私に背を向け、うなだれたように歩き出す。

(ナビ……)

小さな背中が、あまりにも切なくて……

私は、きゅっと花冠を握りしめた。

(お兄ちゃん……)

そう心の中で呼ぶだけで、胸が張り裂けそうなほど苦しくなる。

風が、花も私の悲しみも……すべてを巻き込むように吹き抜けていった…-。

<<第4話||太陽覚醒へ>>