第5話 特別なデート

ダグラス「それぞれの神に伝承があるんだけど……。 海と大地を守る神がいつも傍に置いていたのが、金のたてがみの馬と白いイルカだって言われてるんだ」

私は、泉のほとりにたたずむ馬を見つめる。

淡い光をまとうその馬のたてがみは息を呑むほど美しい金色で…―。

(もしかして……)

馬は何か言いたげに私達を見つめた後、おもむろに泉へ入っていく。

次の瞬間……

○○「え!?」

ダグラス「消えた……?いや、もぐったのか?」

湖面には緩やかな波紋が広がるだけで、その中に馬の姿はない。

何が起きたのかわからず、驚きに目を見開いていると……

ボニータ「キキッ」

楽しげに鳴いたボニータが、泉へと駆けていく。

そして……

○○「ボニータ!?」

小さな水音と共に、ボニータが泉の中へ消える。

思わず追いかけようとする私の腕をダグラスさんが掴んだ。

ダグラス「○○、待って。危ないから俺が行こう」

泉の水に触れたダグラスさんが、訝しげに眉を寄せる。

ダグラス「これは普通の泉じゃない……海水か?」

○○「海水?」

言われて泉に近寄れば、湖の匂いがする。

(さっきの砂浜からは随分離れているのに……)

ダグラス「ちょっと待ってて」

そう言ってダグラスさんは泉にもぐる。

ボニータは大丈夫だろうかと不安な思いで見つめていると、

ダグラスさんがすぐに水面から顔を出し、続くようにボニータも姿を見せた。

(よかった……)

ダグラスさんの傍ですいすいと泳ぐボニータを見て、思わず安堵のため息をこぼすと……

ダグラス「この泉、やっぱり海水だ。相当深そうだし、もしかすると海と繋がってるのかもしれない」

○○「そうなんですか?」

ダグラス「ああ。でも、それより不思議なのが……。 水の中なのに普通に呼吸ができる」

○○「えっ?」

泉の中で驚いたように目を瞬かせている彼に、私は……

○○「本当に不思議ですね」

(神秘的な伝承のあるこの島らしいといえば、らしいけど……)

ダグラス「そうだな。俺も驚いてるよ」

どこかと繋がっている、しかも呼吸ができるとなれば、馬が姿を消したのも納得ができる。

不可思議なこの状況を頭の中で整理していると、ダグラスさんが手招きをした。

ダグラス「○○もおいで。 さっきの馬のことも気になるし、それに……」

ダグラスさんが好奇心に満ちた笑みを浮かべる。

ダグラス「こんなに冒険らしい冒険、海賊の俺でも初めてだ。 特別なデートができそうだし、君と一緒に行きたい」

(ダグラスさん……)

楽しげな彼を見ているうちに自然と心が浮き立って、私も笑顔で頷いた。

泉のすぐ傍までやってくると、迎えに来てくれていたダグラスさんが私の手を握る。

ダグラス「さあ、もぐってみよう」

私は彼に手を引かれるまま、泉に飛び込んだ…―。

(わぁ……)

陽の光が差し込む水中を、ボニータが快適そうに泳ぎ回っている。

ダグラス「○○、大丈夫かい?」

○○「はい、大丈夫……え?」

(水の中でしゃべれてる?)

驚いてダグラスさんの顔を見つめると、彼は得意げに目を細める。

ダグラス「ほら、言っただろう?特別なデートができそうだって」

そう言って指を絡めてくる彼に、私は騒ぐ鼓動を落ち着かせながら頷いたのだった…―。

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