月最終話 分け合う熱の名残り

目にも楽しく、もちろんおいしくもあった夕食を平らげて……

いよいよお待ちかねのリンゴ湯に入ろうという時…-。

べウル「……あのさ」

〇〇「はい、なんですか?」

私が小首を傾げると、べウルさんがはにかむ。

べウル「この後も……きみと一緒にいたい。 ……温泉、一緒に入る?」

上目遣いにそう問われて、頬が一気に熱くなる。

〇〇「えっ!?」

(それって……)

突然の誘いに動揺していると……

べウル「あ、えっと……ごめん。さすがに一緒は恥ずかしいよね。 先に入ってくる!」

リンゴのように顔を赤くしたべウルさんが、慌てて部屋を出ていこうとする。

(あ……嫌がられたって思ったらきっとべウルさん傷つく、よね……)

恥ずかしいだけなのに、それを伝えることもそれはそれで気恥ずかしくて……

〇〇「あの! ……温泉から上がったら、その……ずっと一緒にいたいです」

精一杯の勇気でそう伝えると、べウルさんが赤い顔で頷いた。

べウル「! うん、そうしよう。嬉しい」

べウルさんを見送って、私は一人、熱くなった頬を両手で押さえたのだった…-。

……

べウルさんが出た後、私もリンゴ湯に入る。

〇〇「いい匂い……」

無意識にそうつぶやいた瞬間、さっきの彼の言葉を思い出す。

―――――

べウル『うん、いい匂い……。 この匂いをずっと嗅いでいたら、リンゴが食べたくなっちゃうね。 っていうか……お腹すいたかも』

―――――

食や睡眠や、欲に素直な彼を思うとなんだか微笑ましい気持ちになる。

(べウルさんといると、癒されるなあ)

彼のことを考えているとすぐにのぼせてしまいそうで、私は早めに温泉を出た…-。

……

ぽかぽかとする体で部屋に戻ると、べウルさんはすでに布団に入っていて…-。

〇〇「……べウルさん?」

わずかに身じろいだ彼の顔を覗き込むと……

〇〇「……!」

伸びてきた手に抱き寄せられ、布団に引き込まれてしまった。

べウルさんの力強い腕は、温泉のせいか熱いような気がして…-。

〇〇「べ、べウルさん……起きてたんですか?」

べウル「うん。待ってた」

首の後ろに顔を埋めて、べウルさんが低く囁く。

べウル「甘い匂い……リンゴかな。それとも……」

彼の唇がうなじをたどり……耳をそっと甘噛みされる。

〇〇「んっ……」

与えられた刺激に思わず漏れてしまった声が恥ずかしくて、頬が熱くなっていく。

べウル「かわいい……」

〇〇「恥ずかしい、です……」

なんとか小さな声でそう言うと、彼の笑いが吐息となって首をくすぐった。

べウル「なんで? 今の〇〇ちゃん、すごくかわいい。 だから……もっとおれに見せて?」

甘えるような声が、私の鼓動を速めていく。

べウル「おれ、冬眠するの……嫌だったんだ。 冬眠したら、きみに会えなくなっちゃうから……」

抱きしめる腕に力が込められる。

べウル「でも、しないわけにはいかない。だから…-。 きみに会える時に触れて、抱きしめて……きみのことを感じていたい」

(べウルさん……)

〇〇「それは、私も同じです。べウルさんに会えない時間は……すごく、寂しいから」

べウル「〇〇ちゃん……」

静かな部屋に衣擦れの音が響き……

べウルさんが、私の首筋に顔を埋める。

べウル「……今日はこのまま、朝まで一緒にいたい」

艶を帯びた声が耳に届いた次の瞬間、私は布団の上に組み敷かれていて……

リンゴの甘い残り香に包まれながら、優しいキスを受け入れたのだった…-。

おわり。

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