月最終話 甘い夜

アルフレッドさんと二人で、感謝祭当日の衣装を探し、賑わう街を歩き始めた。

アルフレッド「皆、色々なことを考えるものだね。さて、どうしたものか」

○○「あ、アルフレッドさんの好きなものは何ですか?それに因んだ衣装にしたらどうでしょう」

アルフレッド「好きなもの、か……。服についてはよく分からないが、好きなものと言えばワインだろうか」

○○「そうですよね。じゃあ、ワインをモチーフにした仮装を何か……」

アルフレッド「ワインの仮装??それは一体、どんなものになるんだい?」

アルフレッドさんが、かなり不思議そうな顔をして首を傾げる。

○○「えっと……」

(自分で言ったものの……どうすればいいんだろう)

○○「ワイングラスの帽子……とかでしょうか」

アルフレッド「……?ふふっ、それは面白い」

アルフレッドさんがくすくすと笑う。

○○「……変でしたね」

アルフレッド「仮装パーティーの衣装としては、悪くないのかもしれないが、俺がそれを被るのは、いささか奇妙に思えて仕方がないよ」

○○「す、すみません」

慌てて、次の案を考える。

○○「あ、じゃあ定番で、ジャックオーランタンをモチーフにするのはどうですか?」

アルフレッド「定番……いいかもしれないね」

二人で話し合いながら、街を進んでいくと……被りものをたくさん置いている、可愛らしい出店を見つけた。

○○「あ……」

私が思わず手に取ったのは、猫耳がついているカチューシャだった。

(可愛いな)

アルフレッド「……○○が、それがいいと言うのなら検討するが……」

○○「え?」

私が手に取った猫耳を見て、アルフレッドさんは苦笑いをしていた。

○○「ち、違います……ただ、可愛いなって…―」

(……でも、もしアルフレッドさんがつけたら)

アルフレッド「○○?……何を笑っているんだい?」

○○「! ご、ごめんなさい……」

(ちょっと……見てみたいって思っちゃった)

アルフレッドさんが全てを見透かしたように、クスリと笑みをこぼす。

○○「あ、あの、次のお店に行きましょう」

慌ててアルフレッドさんの手を引いて、私は先へ進んだ…―。

それからもしばらく街を回ったけれど……結局、何も見つけることができないまま、夜を迎えてしまった。

滞在先のホテルへ戻ると、どっと疲れが押し寄せてきた。

(結局……お手伝いするって言って、何もできなかったな。アルフレッドさんを、疲れさせてしまっただけかもしれない)

そう思うと、深いため息が出てしまう。

アルフレッド「疲れただろう?○○」

○○「あ……いえ…―!」

見透かしたように言われて、驚いてアルフレッドさんを見ると、突然、目の前にきらきらと輝く小瓶が差し出された。

○○「え……?」

アルフレッド「衣装探しに付き合わせてしまったお詫びだ」

○○「そんな……結局、決められなかったのに」

アルフレッド「それは、俺が決めなかっただけなんだ」

○○「え……?」

アルフレッド「仮装をして祭りに参加するよりも、貴女と街歩きをするほうが楽しくなってしまってね」

○○「アルフレッドさん……」

アルフレッドさんが小瓶を開けると、かすかにスミレの香りがした。

○○「これ……あのチョコレート……」

アルフレッド「あの時、貴女があんまりいい匂いをさせてたものだから」

優しく言って、アルフレッドさんは私に笑いかける。

アルフレッド「おいで、○○」

○○「……!」

優しく呼ばれたかと思えば、ふわりと膝の上に抱きかかえられる。

アルフレッドさんは、いたずらをする子どものように無邪気に微笑んだ。

アルフレッド「今日は楽しい時間をありがとう」

○○「あ……」

そっと頬に口づけられて……それから、お菓子が口に運ばれる。

アルフレッド「美味しいかい?」

○○「ん……はい、甘くて美味しいです。でも、いつの間にお菓子なんて……ずっと一緒にいたと思ったのに」

アルフレッド「貴女が喜ぶ顔が見たくて、そう思ったらどんな小細工でもできるものさ」

生き生きとして見えるアルフレッドさんの瞳に、鼓動が速くなっていく。

また一つ、お菓子を口に入れられて、甘い香りがいっぱいに広がる。

○○「おいし…―」

言い終わらないうちに、彼の唇が私の唇を塞ぐ。

○○「ん……」

チョコレートの甘さと、キスの甘さが絡まり合う……

(溶けてしまいそう……)

やがて、ゆっくりと唇が離れ……

アルフレッド「美味しいね」

彼の指先が、ゆっくりと私の唇をなぞる。

その指先の感触に、頬の火照りを抑えられずにいたのだった…―。

おわり。

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