月9話 やきもち

セフィル「偶然ですね」

クッキーを手にウィーニーと市場を歩いていると、セフィルさんに声をかけられる。

○○「セフィルさん」

あわててクッキーを後ろにかくすと、セフィルさんの眉がかすかにひそめられた。

セフィル「視察で城下に来ていたのですが……宜しければ、ご案内しましょう」

(嬉しいけど、視察をお邪魔したらいけないよね)

○○「いえ……案内は、ウィーニーがしてくれていますから」

セフィル「……。 ずいぶん私の側近と仲が良くていらっしゃるようですが。 一体、どんなおつもりで……」

○○「セフィル、さん……?」

セフィルさんの口調に首をかしげると、セフィルさんがはっと口をつぐむ。

セフィル「……申し訳ありません。どうぞお忘れください。 公務を投げ出してしまい……王室の人間として、ふさわしくない行いでした」

(もしかして、傷つけてしまった……のかな?)

セフィル「あなたのこととなると、自分を律せない……」

○○「え……?」

セフィル「いえ、私は公務に戻りましょう。 ウィーニー……○○様を頼む」

セフィルさんはとても悲しそうで、私は思わずその袖をひきとめる。

○○「あの……実は、セフィルさんがお忙しそうだから、クッキーを差し入れたくて」

そっとクッキーを差し出すと、セフィルさんが驚いたように目を見開いた。

セフィル「これは……私の好きな……」

ウィーニー「そうですよ、セフィル様! 俺、案内しただけですけど、焼きもちですか?」

セフィル「……っ」

ウィーニーがからかうように言い、セフィルさんの頬がかすかに赤くなる。

セフィル「それは……私のことを好いてくださっていると、思ってよいのでしょうか」

○○「え……っ」

突然のことに驚いたけれど……

その真剣な眼差しに、私は思わず頷いてしまう。

すると、セフィルさんが突然に私を抱き上げて……

○○「あ……っ」

そうして空高く飛び立つと、ウィーニーは楽しそうに手を振った…―。

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