月8話 後ろ姿

うららかな日差しが差し込む昼下がり…―。

○○「あの、セフィルさんの側近の方……ですよね?」

さっそく調査を開始した私は、セフィルさんといつも一緒にいる若い側近の方に声をかけた。

側近「はい、○○様」

○○「私、セフィルさんにお礼がしたくて……。 お好きなものとか、教えていただけませんか?」

側近「ああ……それでしたら、今朝、紅茶のクッキーが食べたいと言ってましたよ」

人懐っこい笑顔を浮かべ、側近さんが教えてくれる。

側近「城下町で売っているものなんですけど……以前僕が買って行ったら、セフィル様気に入っちゃって」

(それなら、用意できそう!)

側近「よかったら、お店にご案内いたしましょうか?」

○○「いいんですか?」

側近「もちろん。ちょうど城下が恋しくなってきたところですし」

○○「ありがとうございます……!」

(セフィルさん、喜ぶかな)

嬉しさに頬を緩めたとき、

セフィル「……随分楽しそうですね。何を話していらっしゃるのですか」

セフィルさんに声をかけられる。

(秘密にして、驚かせたい)

○○「いえ、何でもないんです」

あわてて言うと、セフィルさんが眉をかすかにひそめる。

側近「それよりセフィル様、さっき執事が探していましたよ」

セフィル「……そうか」

○○「あの、で、ではこれで」

気付かれないよう、私は逃げるようにその場を後にした。

……

(無事に買えてよかった)

側近さんの案内で、私はクッキーを手に入れることができた。

側近「売り切れてなくてよかったですね」

側近さんの言葉が遠ざかり、私の目は、ただ一つの人影を追っていた。

(セフィルさん……!)

側近「セフィル様……あ、そっか。そういえば今日は城下視察のご予定でした。 ああ、またあんなに人に囲まれて……」

(いつも、ああなんだ)

○○
「国民の方々に、愛されているんですね」

ーーーーー

セフィル「……愛されているのは、私の仮面です」

ーーーーー

(やっぱり、皆さんがセフィルさんの仮面を見てるなんて思えないよ)

人に囲まれた後ろ姿をじっと見つめていると、側近さんがクスリと笑みをを落とす。

側近「セフィル様が気になりますか?」

○○「わ、私……」

側近「いえ、自分の主人が○○様みたいにかわいい女性に好かれるなんて。 嬉しいなって」

(好かれる……)

その言葉に胸が不意に音を立てる。

それを隠すように、私はあわてて口を開いた。

○○「お陰様で、クッキー買えました。ありがとうございます……えっと、側近さん」

側近「やだな、ウィーニーって呼んでください」

○○「じゃあ、ウィーニー。本当にありがとうございました」

私はウィーニーに微笑みかけた。

セフィル「……」

執事「おや、あれは……○○様と……ウィーニーですな。 何やら楽しそうなご様子…―」

セフィル「……すまないが。 今日の予定は、キャンセルするように」

執事「……セフィル様? セフィル様、どこに行かれるのですか」

二人を、セフィルが追いかけて行った…-。

<<月7話||月9話>>