月最終話 豹変

その翌日…―。

レジェの部屋を訪れると、彼はまだベッドで横になっていた。

(気持ちよさそうに眠ってる……)

○○「レジェ……少し、ロイさんのところへ行ってくるね」

彼の安らかな寝顔にそっと囁きかけて、ロイさんの部屋へ向かった。

……

○○が部屋を出ると、それに続いて執事も部屋を後にした。

レジェは、誰もいない部屋でまぶたを開けた。

レジェ「……○○は、どこへ?まさか……ロイの元へ行ったのか……?」

レジェの表情が、たちまちに暗く淀んでいく。

レジェはベッドからゆっくりと起き上がり、○○の後を追った…―。

……

(……いた!)

ロイさんは、ひとり中庭でぼんやりと風景を眺めていたけれど、すぐに私に気づいて鋭い視線を向けてきた。

ロイ「……兄様に怪我をさせてしまった僕と、話すことなどないはずです」

○○「ロイさん!レジェは……あなたのこと……」

伝えたい言葉を、うまく紡ぎ出せない。

ロイ「……僕」

○○「ロイさんお願いです、レジェと話を…―」

思わず彼に歩み寄ろうとしたその時…―。

○○「……っ!」

突然、後ろから強引に腕を掴まれた。

○○「……レジェ!?」

レジェは、私の後ろに立って、私に厳しい視線を送っている。

レジェ「こんなところで何をしているんだ」

○○「レジェ、よかった、ロイさんと話を…―」

レジェ「話すことなんかない。ほら、おいで」

ロイ「兄様……っ!?」

レジェ「ロイ。今回のことでわかった。お前とは決してわかり合えない。僕を憎むのは構わない。だが、○○は僕の客だ。……手を出すな」

ロイさんは、何が起こってるのかわからないといった様子で立ち尽くしていた。

レジェ「さあ、行くよ」

私はレジェの強引な腕に引っ張られ、その場から連れ出されてしまった。

(レジェ、一体……?)

レジェの腕に引かれるまま、彼の部屋へ連れて来られた。

○○「レジェ……一体どうしたんですか?ロイさんと、話を…―。!!」

それは、私の知っているレジェではなかった。

歪んだ微笑みを口の辺りに浮かべて、黒く淀んだ瞳で私を見据えている。

レジェ「ちゃんと、教育しておかないと」

○○「教育……?レジェ、何を言ってるんですか……!?」

私の頬に、彼の両手が添えられる。

(レジェ……なんだか、怖い)

レジェ「……ベッドの中で考えてた。ロイがああなってしまったのは、僕がしっかり教育してやれなかったからだ。僕の言葉が、気持ちが届かない場所に行って、ああなってしまった……だからね、○○はしっかり教育しておきたい。僕の傍から、離れられないように…―」

○○「……っ!」

突然レジェに首の後ろを掴まれて、彼の胸元に抱き寄せられた。

レジェが私の顔を覗き込むと、彼の吐息が頬に触れ、体が震え出す。

レジェ「……怖い?僕のこと」

○○「……」

(言葉が……出ない……)

すぐそこまで込み上げている涙が、今にも溢れてきそうで、私の目頭を熱くした。

レジェ「僕は……一体どうしてしまったんだろう。今にも泣きそうな……そんな君の顔が、愛しくて仕方ないんだ」

レジェの瞳に、私の唇が映し出される。

○○「……レジェ」

レジェ「大丈夫、怖がらないで」

○○「……っ」

次の瞬間、彼の唇が私の唇に重ねられる。

彼の舌が私の唇を割り、口の中をまさぐるよう深く奥まで入り込む…―。

○○「レジェ……っ」

レジェ「黙って」

かすかな言葉は奪われて、彼の舌が私の口の中を支配する。

(怖い……)

その時、彼のブロンドの髪が頬に触れた。

(前と同じ……柔らかな髪)

朦朧としていく意識の中で、以前の彼に想いを馳せて、涙がそっと頬を伝った…―。

おわり。

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