月5話 冷たくて温かい

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紫雨『……もう少しだけ、ここにいよう。 僕達は、皆の夢の力を分けてもらいに来たんだから』

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行き交う人達の明るい声が、絶えることなく会場内を満たしている。

紫雨「〇〇? ……ごめんね。もしかして嫌だったかな? もし君が、もう宿へ戻りたいならそれでもいいし…-」

〇〇「……いえ。もっと、皆が楽しんでいる姿を見ていたいです」

そう答えると、紫雨さんは優しく頷いた。

紫雨「わかった。まだ見ていないところから、順番に見ていこう」

そう言って、私に手を差し伸べてくれる。

〇〇「あ……はい」

自然に出されたその手を、少しドキドキしながら取った。

しなやかな指先が優しく私の手を包み込む。

紫雨「ごめんね……僕の手、ちょっと冷たくて」

そう言って、遠慮がちに力を緩めようとする手を、私は強く握り返した。

〇〇「いえ。平気です」

(不思議だな。冷たいけれど、なんだか温かく感じる)

紫雨「……なら、よかった」

少し照れたように微笑む彼は、ゆっくりと歩き出す。

(きっと……この温もりは、紫雨さんの心が優しいから)

そう思っていると……

??「あ、そこのお二人!」

声のする方を見ると、係員さんが私達を手招きしている。

係員「今しか見ることができない、特別な花の展示を見ていきませんか?」

紫雨「特別な花……?」

私達は顔を見合わせる。

優しい風に乗って、ほんのりと爽やかな花の香りが運ばれてきた…-。

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