月最終話 神秘の海を、二人で

珊瑚礁が広がる海底で、ダグラスさんの腕の中に包み込まれる…―。

ダグラス「不安な思いをさせて、すまなかった」

○○「いえ、私こそ……心配をかけてしまってすみません」

ダグラス「いや、強い水流がくるのはわかってたんだから、俺がもっと早く君を捕まえておけばよかったんだ」

○○「でも、私が…―」

ダグラスさんの人差し指が、私の唇にあてられる。

ダグラス「不安だとか心細いとか、少しでも君にそういう思いをさせたなら、俺が悪い」

○○「ダグラスさん……」

ダグラス「お詫びに、君が満足するまで優しくして甘やかすから、許してくれるかい?」

悪戯っぽくそう言うダグラスさんにつられて、私も笑ってしまう。

○○「ダグラスさんはいつも優しいです」

ダグラス「下心があるからね」

○○「え?」

ダグラス「君に俺のことを好きになってほしいっていう、下心」

熱くなる私の頬を見て、ダグラスさんがくすりと笑った。

ダグラス「違った。『もっと』好きになってほしい、の間違いだったかな」

彼への想いを簡単に見抜かれて、言葉に詰まってしまう。

見つめ合う私達の周りを、イルカが楽しげにくるくると泳いでいた。

ダグラス「ああ、イルカにもお礼を言わないとな」

○○「そうですね。それに、あの馬にも……」

私をここまで連れてきてくれた後、用は済んだとばかりに去って行った馬の姿を思い返す。

○○「ダグラスさんに会わせてくれてありがとう。 あの馬にも、そう伝えておいてもらえる?」

イルカが頷き、どういたしましてとでも言うように鳴いた。

すると……

ダグラス「……そういえば」

○○「どうかしたんですか?」

ダグラス「いや……ほら、白いイルカと一緒にいたっていう神の話、しただろう? 海と大地を守る神がいつも傍に置いていたのが、金のたてがみの馬と白いイルカだって言われてるんだ」

○○「はい。海と大地を守る神様ですよね?」

ダグラス「うん。その神と、恋仲である女神の仲を取り持ったのはイルカだったって言われてるんだ」

(え……?)

ダグラス「喧嘩をして海に隠れてしまった女神の元に、白いイルカが案内してくれた……だったかな?」

(私のところにダグラスさんを連れて来てくれたのも……)

驚いてイルカを見ると、得意げに鳴いて……

○○「……!」

口の先で背中を押され、私はダグラスさんの腕の中に飛び込む。

ダグラス「ははっ、本当に気が利くイルカだな。 おかげで俺の女神を捕まえられた」

愛おしげな眼差しを向けられ、頬が熱を持っていく。

ダグラス「伝説では二人は結婚したみたいだけど、俺達はどうしようか?」

(結婚……)

大好きな彼との未来を想像すると、それだけで胸がドキドキと甘く騒ぐ。

ダグラス「あやかるわけじゃないけど、俺はできることならずっと、君と一緒にいたいと思ってる。 君が好きなんだ」

○○「私も……ダグラスさんが好きです」

真摯な想いを返したくて気持ちを口にすると、ダグラスさんが嬉しそうに笑った。

ダグラス「知ってる。君は素直で、かなりわかりやすいから」

(やっぱり……)

ダグラス「かわいくて、愛おしくて……一緒にいる時間の分だけ、俺は君に夢中になっていくんだ」

惜しみなく語られる愛の言葉に、胸が高鳴っていく。

照れる私とは反対に、ダグラスさんは余裕の笑みを見せて……

○○「……っ」

軽く触れるだけのキスの後、彼はにっこりと笑った。

ダグラス「さて、俺の女神様?せっかくだから海底デートを楽しもうか」

○○「……はい!」

珊瑚礁の海で自由に泳ぎ、会話もできる……そんなデートができるのは今だけだということを思い出す。

辺りを見回せば、遥か海上から差し込む光がきらきらと珊瑚を照らしていた。

○○「ダグラスさん、何をしましょうか?」

弾む気持ちで振り返った私を見つめる彼の瞳は優しくて……

ダグラス「ごめん。やっぱりもう少しだけ、君と遊びたい」

もう一度引き寄せられたかと思えば、額や頬、首筋へとキスの雨が降ってきた。

○○「……っ、くすぐったいです」

ダグラス「ははっ」

空と海が混ざると言われている伝説の島・シエルマーリン……

その神秘的な海を楽しめるのは、まだまだ先になりそうだった…―。

おわり。

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