月最終話 二人きりの花見

翌朝・・・・ー。

窓から差し込む光で、目を覚ました。

窓の外を見ると、太陽の光が蓬菜の木々達に柔らかに降り注いでいる。

(いいお天気・・・・)

青空に誘われて、私は中庭へと向かった。

中庭を散歩していると、目の前にひらひらと桜の花びらが舞い落ちてくる。

○○「・・・・!」

桜花「ふふふ。驚きましたか?」

悪戯っぽい笑顔を浮かべた桜花さんが、木陰から現れた。

○○「はい、驚きました! すごく綺麗ですね・・・・」

まだ宙を舞っている花びらを、そっと手に取って眺める。

桜花「一足先に、○○さんだけに春を差し上げましょう」

桜花さんは柔らかく微笑むと、天上を仰ぐように優雅に舞い始める。

すると、次の瞬間・・・・

(わぁ・・・・)

次々に蕾が膨らんだと思うと、あっという間に満開の花が咲き誇った。

○○「・・・・すごい」

目の前に広がる幻想的な光景に、心からの言葉がこぼれる。

桜花「喜んでいただけたようで嬉しいです。 よかったら、ここで花見をしませんか?」

○○「素敵ですね!」

飲み物や料理などを用意して、私達は花見の準備をすることにした。

・・・・

・・・・・・

満開の桜の木の下で、私達は肩を並べながら座る。

桜花さんは桜の木を眺めながら、杯に口をつけた。

桜花「開花の儀式でも、綺麗な桜を披露できそうです。 養生のためにあなたと出かけてから、体中から力がみなぎっているんです。 ○○さんが付き合ってくださったおかげですね」

○○「そんな・・・・私はただ、ついて行っただけです」

桜花「・・・・何度でも言います。あなたは、私の傍にいてくれるだけでいいのです」

突然、桜花さんがぐっと顔を近づけてくる。

○○「・・・・!」

(お、桜花さん・・・・?)

桜花「○○さん・・・・」

桜花さんの手が伸びてきて、私の頬を優しく撫でる。

(いつもの桜花さんと・・・・ちょっと違う?)

吐息を感じるほどに、桜花さんの肌が近い。

○○「あの・・・・桜花さん・・・・!?」

桜花「私に触れられるのは、嫌ですか?」

○○「いや、そうではなくて・・・・」

桜花「ふふ。あなたの頬は柔らかいのですね」

(桜花さん、どうしたんだろう・・・・)

瞳が危なげに揺れ、頬はほんのりと赤く染まっている。

(・・・・もしかして)

桜花さんが手にしている杯には、お酒が入っていた。

(花見酒・・・・? 桜花さん、もしかして酔っぱらってる?)

○○「桜花さん、少し飲み過ぎましたか?」

桜花「私がですか? いえ、そんなことは・・・・ないですよ」

その口調も明らかに心許なくて・・・・

○○「桜花さん、お部屋に戻りましょうか?」

桜花「いえ・・・・いやです」

桜花さんは、私の肩に力なくしなだれかかってくる。

○○「・・・・!」

桜花「もう少し、このままで・・・・○○」

(よ、呼び捨て・・・・!?)

耳元で甘えた声で囁かれ、心臓が早鐘のように打つ。

(どうしよう・・・・)

(とりあえず、体を起こしてもらおうかな)

○○「あの、桜花さん・・・・」

けれど、次の瞬間・・・・

桜花「う・・・・ん・・・・」

桜花さんは、私の膝に頭をのせてしまった。

○○「あ、あの・・・・!」

桜花「・・・・」

しばらくすると、小さな寝息が聞こえてくる。

(・・・・桜花さん、寝ちゃったの?)

桜花「う・・・・ん・・・・○○」

(寝言かな・・・・?)

桜花さんは無防備な寝顔で、私の名前をつぶやいた。

(こんな桜花さん、初めて・・・・)

いつもの凛とした彼も素敵だけれども、膝の上で幸せそうに眠る彼も愛おしく思える。

(かわいい)

私は彼の頭を撫でながら、満開の桜を眺める。

頬を撫でる風は柔らかく、すでに春の香りがする。

(彼が連れてきた季節・・・・)

優しい風は桜の木を揺らす。

花びらは一気に舞い上がると、私達の周りをひらひらと踊った・・・・ー。

おわり。

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