月SS あなたと一緒だから

○○さんと湯治の旅から城へと戻った、その翌日・・・・ー。

中庭に出てみると、散歩をしている○○さんを見かけた。

(・・・・そうだ)

そっと大きな木の後ろに隠れ、小さく舞う。

狙い通り、ひとひらの桜の花びらが彼女の前にゆっくりと落ちていった。

○○「・・・・!」

桜花「ふふふ。驚きましたか?」

小さく驚いた様子に内心頷き、彼女の前へ姿を現すと・・・・

○○「はい、驚きました! すごく綺麗ですね・・・・」

彼女はにっこりと笑い、喜んでくれた。

(・・・・本当にかわいらしい方だと、何度思っても足りない)

(彼女に、もっと喜んでもらうには・・・・)

手のひらをかざし桜の花びらを受け取める彼女を見て、とあることを思いつく。

桜花「一足先に、○○さんだけに春を差し上げましょう」

(あなたのために、舞いたい・・・・ー)

くるりと体をひるがえすと、いっせいに桜の花が開き始め、次第に満開になっていく。

○○「・・・・すごい」

目を大きく開き、じっと桜の木々を見上げる彼女を見ると、笑みがこぼれた。

桜花「喜んでいただけたようで嬉しいです」

(・・・・そうだ)

桜花「よかったら、ここで花見をしませんか?」

(あ・・・・)

気づけば、浮かんだ案をそのまま口に出してしまっていた。

(私としたことが・・・・つい)

けれど、○○さんは、そんな私の提案に表情をいっそう明るくさせてくれた。

○○「素敵ですね!」

(ふふ・・・・よかった)

快く誘いを受けてもらって、心が弾む。

(ならば、さっそく準備に取りかからないと)

彼女の手を取り、花見の準備のため城へと戻った。

・・・・

・・・・・・

桜の木々がよく見える場所に腰を下ろし、城から持ってきた食べ物などを広げる。

咲いたばかりの桜の下、・・・・美しい花達を眺めていると、なんだか気分が高揚してくる。

(・・・・いけない)

じんわりと体に宿った熱を感じた時には、お酒をだいぶ飲んでしまっていた。

桜花「開花の儀式でも、綺麗な桜を披露できそうです。 養生のためにあなたと出かけてから、体中から力がみなぎっているんです。 ○○さんが付き合ってくださったおかげですね」

私の口は、いつもよりも饒舌になっているようだった。

○○「そんな・・・・私はただ、ついて行っただけです」

(謙遜など・・・・しないでください)

(あなたは、私の傍にいてください・・・・)

桜花「・・・・何度でも言います。あなたは、私の傍にいてくれるだけでいいのです」

体の熱に浮かされ、少し大胆に彼女に近づく。

○○「・・・・!」

桜花「○○さん・・・・」

(なんだか・・・・とても気持ちがいい・・・・)

愛しさが募るままに、頬に触れた。

○○「あの・・・・桜花さん・・・・!?」

桜花「私に触れられるのは、嫌ですか?」

○○「いや、そうではなくて・・・・」

不思議と、彼女を困らせたくて仕方がない。

(下げられた眉が、なんて愛しいのだろう・・・・)

桜花「ふふ。あなたの頬は柔らかいのですね」

(ずっと・・・・こうして触れていたくなる)

○○「桜花さん、少し飲み過ぎましたか?」

(この気分の高まりは・・・・お酒のせい?)

(いや、違う・・・・違うのですよ、○○)

心の中で彼女の名前を呼んだ時には、視界に靄がかかってきていた。

桜花「私がですか? いえ、そんなことは・・・・ないですよ」

ちゃんと返事をしたいのに、上手く言葉にならない・・・・

○○「桜花さん、お部屋に戻りましょうか?」

(これでは・・・・彼女に心配されるのも無理がないですね)

(けれど・・・・)

桜花「いえ・・・・いやです」

頭で迷惑をかけているとわかっていながらも、この居心地のよさを手放すことができない。

(だから・・・・)

○○「・・・・!」

桜花「もう少し、このままで・・・・○○」

(ふふ・・・・なんだかひどく甘えたい気分です)

驚いた彼女の様子さえ、愛しくてたまらない。

○○「あの、桜花さん・・・・」

(あれ・・・・○○さん・・・・?)

彼女の声が、どんどん遠くなっていく。

(行かないで・・・・ここにいて)

桜花「う・・・・ん・・・・○○」

(意識、が・・・・ー)

そのまま、私は意識を手放してしまう。

真っ赤な顔で彼女に謝ることになると知るのはもう少し後のことだった・・・・ー。

おわり。

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