月最終話 一番の幸せ

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カラン『〇〇様、私とお付き合いをしていただけませんか。 返事はすぐにでなくても結構です。……では、私は公務に戻ります』

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その夜…-。

カランさんからの突然の申し出を受けた私は、混乱する頭でリドのことを考えていた。

(私は……)

私は部屋を出て、リドのところへ向かった…―。

リドの部屋の前で、深呼吸をしてからノックをする。

〇〇「リド? 私……入っていい?」

リド「ああ……」

中から、リドの静かな声が聞こえて来た。

部屋に入ると、リドは明かりもつけずに窓の外を眺めていた。

彼の緑色の髪が、今は月明かりに照らされて蒼白く光っている。

リド「……どうしたんだよ、もう遅いぞ」

リドは、私と視線を合わせないままそうつぶやいた。

〇〇「あのね、リド……。 その……カランさんのこと……」

いつもとなんだか違うリドの雰囲気に、言葉が詰まってしまう。

リド「……いいじゃねえか、兄貴の申し出だぜ? 本気であんたに惚れてる……大事にしてくれるよ」

リドの言葉に、胸が驚くほど痛くなる。

〇〇「リドは私とカランさんが、お付き合いしてもいいの?」

心の声がそのまま漏れてしまい、はっと両手で口を押えたけれど……

リド「オレは、そう言うしかねえだろ……!」

リドの声に、苛立ちが募っている。

〇〇「……」

リドの剣幕に、思わずうつむいてしまう。

リド「悪い……さ、もう寝ろ。 兄貴にちゃんと、返事してやれよ」

リドはそう言ってまた、窓の方へと視線を向けた。

〇〇「リド待って、私は……」

リド「……っ!」

窓際から、リドが私の方へ近づいて……

私の体が、リドに力強く抱き寄せられた。

リド「オレなんかが、兄貴の邪魔できるわけないだろ! あんたは……何でここに来たんだよ」

リドの声が、ふるえている。

(私は……)

カランさんから告白されて混乱していたのは、リドが何も言ってくれなかったから。

そのことがどうしようもなく悲しくて、きっと私はここに来てしまった。

〇〇「……リドに、伝えなきゃって思ったの。 私が、一緒にいたいのは……」

言おうとするけど、なぜだか涙が出そうになって言葉を詰まらせてしまう。

リド「ごめん……」

リドがそうつぶやくと、決心したように拳をぎゅっと握りしめた。

リド「兄貴にも、誰にも譲りたくない。 ……あんたの一番になりたいんだ。 他の奴を見ないで、オレだけを見てくれ」

聞いたことがない、リドの真剣な声に、胸がトクンと音を立てる。

〇〇「……うん、私もリドが一番好き」

リドの背に、そっと腕を回す。

もうずっと気づいていたはずの気持ちなのに、今やっとそれが伝えられた気がした。

リド「……オレがいいなんて、やっぱり変な奴だ」

リドは私の瞳に溜まっていた涙の粒を指で拭った後、頬を優しく撫でてくれた。

そしてそのまま、彼の顔が近づいて……

〇〇「ん……」

唇と唇が、重なり合う。

やがて唇が離れ、息を吐く私を見下ろしながら、リドが悪戯っぽく微笑んだ。

リド「……兄貴に謝りに行かねえとな。 あと、ティーガにも自慢してやるか」

〇〇「ふふっ……」

リドの腕をぎゅっと握りながらも、もう一度リドの胸に顔を埋めると……

温かくて優しい鼓動が聞こえてくる。

リドがしっかりと抱きしめてくれて、今までで一番、幸せな気持ちに包まれていった…-。

おわり。

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